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ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
愛の妄想劇場:シャングリラ・フラワーズ(2)
お花屋さん、じょみのターン!(^▽^)今までのエピソードはほぼ実話に忠実に基づいた流れでしたが、じょみの分は二人分のエピソードを混ぜ、それプラス妄想成分たっぷりって感じです。つ~か多分妄想成分が大部分になりそうな予感。嗚呼それにしても可愛いじょみを書いてるとなんだか自分まで癒されるデスよ…(^。^)こんな生き物一匹欲しいよね…ついそんなことすら考えてしまう今日この頃。

実際に番組で出てきた以外の花屋の事情とかは全く存じ上げませんので、色々と想像&捏造でございます。そんな辻褄の合わないお話でもいいわって方は↓ドウゾ~☆



カランコロン…♪

軽やかなベルの音が店内に鳴り響くと、それに応えるように明るい声がブルーを出迎えました。

「いらっしゃいませー!」

店内に一歩足を踏み入れたブルーは、今まで勝手に抱いていたイメージと全く違う店内の様子に、内心少しショックを受けたのです。素早く店の内装を値踏みしたブルーの感じた初印象は、「垢抜けない、田舎臭い」といった、いささかマイナスなものばかりでした。あくまでもビジネスの視点で店舗を観察し比較してきたブルーの目は、短時間の間に冷静に店内のあちこちを見極めておりました。シャングリラ本社が期待をかけて予算をつぎ込んだアルタミラ店とは特に格段の差です。美しく芸術的なアレンジメントを置いてあるわけでもないし、高い天井やシャンデリアもなく、巧みに趣向を凝らした内装などどこにも見当たりません。いかにも素人がペンキを塗りましたという素朴な色合いの壁、床はコンクリの打ちっぱなし。ベニヤ板を切りっぱなしでそのまま鉄骨の骨組みと壁に取り付けただけの質素な棚は一目で手作りと分かります。アルタミラ店と比べると店内も狭苦しいの一言です。

しかし、こじんまりとした店の中は、花、花、花…どちらを向いても花で溢れておりました。何故だか分からないけれども、今まで訪れた店舗では感じなかった、花そのものの生命を感じられるような気がするのです。花達が一斉に自分を出迎えてくれているような…。そんな錯覚を起こしながらブルーが店内を眺めていると、大輪のひまわりの束を抱えた若者が更にブルーに声をかけました。

「お客様、当店は初めてですね。今日はどんな花をお探しですか?」

にっこりとブルーに微笑みかけるその笑顔は、まるで店の花達の声を代弁しているかのようにブルーの耳に響くのです。太陽の光をたっぷりと浴びたような、眩いばかりの黄金の髪。店内の花達に負けないような新緑の色をした瞳。彼はまるで彼が抱えているひまわりの一輪のようでした。背丈はブルーと同じくらいでしょうか、深緑色のエプロンがとても良く似合っています。確かここの店舗の店長は19歳の筈…。バイトが二人いるとは聞いていましたが、彼がその店長なのでしょうか。あまりに屈託のないその笑顔に、ブルーは内心うろたえながら答えました。

「い、いやその、僕は客じゃなくて、ここの店で研修を受けることになっている予定の者で…」
「ああ!本社から話は聞いていますよ、ブルーさんですね。ようこそ、シャングリラへ。僕は店長のジョミーです!」

これ以上笑顔になるのは無理だろうと思っていたら、ジョミーと名乗った若者の顔はたちまち更に破顔し、まさにその場で花が咲いたような全開の笑顔になりました。ひまわりを抱える若い店長は、早速ブルーに手を差し出し、ブルーは勢いに押されるままにその暖かい手を握って握手を交わしたのです。この店でこの店長の下で一体全体どのような研修期間を迎えることになるのか、そのときのブルーにはまるで想像もつきませんでした。




自分は一応見習いの身分だということになっている筈なのに、ブルーの研修期間が始まってもジョミーはブルーに対する敬語を崩しませんでした。それだのにブルーに対しては自分に同年代に対する口の聞き方で構わないと強く主張するので、その言葉に甘えてブルーは見習いというには随分とぞんざいな言葉遣いでジョミーと会話をするのが常でした。

「僕はまだこんな若造だから、初心を忘れずに謙虚でいたいんですよ」

花の水切りをしながら、相変わらずにこにことジョミーがそう言うのです。

「失礼だけど、君は幾つなのかい?店を一つ任されるには随分と年が若いように見えるけれど…」

勿論ブルーはジョミーの年齢を知っています。が、彼自身の口からどのような答えが返ってくるのか興味がありました。しかし、ジョミーは全く気にする様子もなく、気さくに答えてくれるのです。

「19です。この店で結構長いことバイトで勤めてたんですけど、17のときに前の店長が引退するっていうんでたまたま一番長く勤めていた僕が店長を引き継ぐことになって。なにしろ突然の話だったんで、当時はとても驚きました」
「では随分経験はあるんだね。17で店長ってことは、バイトはもっと前から?」
「僕の家、父がいなくて子沢山なんですよ。だからいつまでも親に甘えてるわけにはいかないから、割と早くから働きに出てたんです。花屋に勤め始めたのは、もともと亡くなった父が花屋だったんで、なんとなく…でも結構性に合ってるみたいで。やっぱり血ってやつなんでしょうね」
「お父上も、花屋を?」
「はい、父が亡くなったときはまだ僕も子供だったし、母一人ではどうにもならなくて…だから店自体は結局閉めたんですよ」

チャキ、チャキ、チャキ…ジョミーの器用な手つきが手際良く花の茎を切り揃えていく様子をブルーはただぼんやり眺めておりました。そんな経歴を持つ割には、ジョミーには翳りというものが見当たりません。ブルーの好奇心は刺激される一方です。普段は決して必要以上に他人の事情に立ち入ることのないブルーでしたが、ことジョミーに関してはつい色々と詮索するような質問を投げかけてしまうのです。

「それでは随分苦労したんだね」
「そんなことはないですよ!今はこうして独り立ちできててるわけだし、母やみんなが支えてくれたおかげです」
「シャングリラ・フラワーズで働くことに君は満足しているかい?いつか独立して自分の店を持ちたいとか…」
「うーん…今は特に興味ないですね。やっぱり、シャングリラというチェーンのおかげで、手に入れにくい花や流通ルートが融通利きますから。それに、こんな若い僕みたいなのを店長として採用する、シャングリラの方針が僕は素直に凄いなあって」
「凄い?」
「ええ、僕は店舗ひとつ任されるには若すぎると思うでしょう?僕も自分でそう思うくらいですから…。本社で反対もあったんじゃないかと思うんですけど、それでも僕みたいな青二才を信用して採用してくれたわけですから、賭けみたいなものですよね。それなのに許可を出してくれるって、凄く考え方の柔軟な会社なんだなあって」
「…」
「だから、僕はできる限りシャングリラに恩返ししたいなって…あ、いらっしゃいませ~!」
「こんにちは、ジョミー」

カランコロ~ン♪

話の途中でお客さんがやってきて、ジョミーの注意はそちらに向けられました。なんだか少し動揺しながらブルーはジョミーに教えられたとおりに花の水切りを続行します。元々不器用なブルーでしたが、ジョミーの教え方が上手なのか、少しはまともに手伝いを出来るようになってきました。

シャングリラ・フラワーズのそれぞれの店舗の店長の任命については必ず会長であるブルーのサインが必要なことになっています。ですからまだ17だったジョミーを店長に、という話にはブルーも許可を出した筈なのです。ですが、ブルーにはその記憶が殆どありませんでした。確か「若いが見込みがある」とかなんとかキースに言いくるめられたような気はします。肝心なところをぼかし、はっきりと年齢を知らせて来なかったのは、知ればブルーが反対するだろうとキースは考えたからに違いありません。しかし今ではジョミーの店はシャングリラ・フラワーズのチェーン一の売り上げを叩き出す店舗。こうして結果だけ見れば、大成功としか言いようがありません。ブルーとはなんだかんだとぶつかることの多いキースなのですが、やはりこうして時折見せつけられる彼の決断力にブルーは舌を巻くしかありませんでした。

なにしろこの店には本当にひっきりなしに客が訪れるのです。例えばアルタミラみたいな都市に比べると街の規模自体が小さい筈なのに、ガランとしたアルタミラ店舗に比べると、この店の賑わいようはどうでしょう。しかも驚いたことに、ジョミーは客の殆どと顔見知りなのでした。それだけでなく、誰の誕生日がいつだとか、誰と誰の結婚記念日がいつだとか、ジョミーは実によく知り尽くしておりました。

「結婚式の装花の注文もよく受けますし、友人も多いですから」

誕生日だけでも凄いと思うのに、結婚記念日?と驚くブルーに、ジョミーは笑いながら答えるのです。

「この街に住んでる人達は、ある意味みんな僕の家族みたいなものですからね」

カランコロ~ン♪

「今戻ったぜ~!」

水切りを終えた花達をケースに戻し終わった、丁度そのタイミングでバイトのサムが配達から帰ってきました。

「よ、お疲れ!」
「今日は雨になるかと思ったけど、どうにか降らずに済んで助かったぜー」
「だから車に傘くらい積んどけっていつも言ってるだろ」
「いっつもそうしようと思ってるんだけど、忘れっちまうんだよな~」
「花の配達人がずぶ濡れだったらカッコがつかないじゃないか」
「何を言う!これこそ水も滴るいい男ってやつさ」
「一人でやってろよ」

店長とバイトという間柄の割にはまるで友人同士のような気さくな会話。それもそのはず、この店のバイトは二人とも、元々ジョミーの高校時代の同級生なのだそうです。サムはもっぱら配達の役目、もう一人いるバイトはスウェナという女性で、こちらは大抵大学の授業のない午前中のみやってきて、花の仕入れや経理に関する事務作業をてきぱきこなすしっかり者です。

「今日はもうこれで上がりだろ?」
「ああ、明日こそ傘持ってくるわ。じゃな」
「お疲れさん、また明日」

サムが帰宅し、客の流れも一通り落ち着いたところで、床を掃いていたブルーの目が目の前の棚に留まりました。そこには水栽培のクロッカスやゼラニューム、セントポーリアの鉢植えが数個綺麗に花を咲かせています。

「このお店は鉢植えも扱っているんだね」

シャングリラ・フラワーズは基本的に扱っているのは切り花ばかりで、鉢植えの植物は扱っていないのです。しかし見習いである筈のブルーがそんなことを知っているのはおかしいので、ブルーはさりげなくその疑問を口に出してみました。

「ああ、それですか?」

ジョミーはなんだか少し照れくさそうに鼻の横を掻きました。

「そこの棚に並べてあるのは、シャングリラから仕入れたものじゃないんです」
「では仕入れはどこから?」
「仕入れたっていうか…まあ自前ですよ。このお店は子供もよく来るから、温室で綺麗に咲いて切り取られるのだけが花じゃなくて、花もちゃんと生きてる命だってことを知ってもらえたらなって…自分の手で育てればそれがよく分かるでしょう?まあ僕はあんまり土いじりは得意じゃないんですけどね」
「…」
「夏になったら朝顔の種なんかも置くんですよ。で、お店にも鉢を置いて種を蒔いて、種を分けてあげた子供達とどんな色の花が幾つ咲くか競争したりするんです」

こう見えても結構負けず嫌いなんで、子供達相手にムキになって頑張っちゃうんですよね。えへへ、とはにかんだ笑顔でジョミーが言うのを、なんだかブルーは呆然として聞いていました。

「ここの地域は四季がはっきりしてるから、春先は郊外まで足を伸ばして野草の花や木に咲く花を見に行ったり、秋には紅葉を見に行ったり、色々出歩くことも多いです。弟や妹達を連れて行くこともあるし、楽しいですよ」


丁度客のいない間にお昼ご飯を済ませてしまおうとジョミーがなにやらランチバッグを取り出しました。

「サンドイッチを余分に作ってきたんですよ。よかったら、いかがですか?」
「え、…いいのかい」
「はい、最初からそのつもりでしたから」

実は初日から数日続けてカロリーメイトを取り出してもそもそと齧っていたのをジョミーに見咎められ、もっとまともなものを食べたほうが良いとお説教されてしまったのです。ブルーはとりあえず本社の借り上げたウィークリーマンションに寝泊りしているのですが、新しいアパートが見つかるまで期間限定の住まいという設定なので、ろくなものを食べていないだろうとジョミーに本気で同情されてしまったのでした。ブルーは確かに身分は全テラチェーンの会長という立場ではありましたが、実は食に関しては殆どと言って良いほど興味がなく、本社にいるときですら面倒で食事は固形の栄養補給食品のようなタイプものや栄養ゼリー飲料などを平気で口にするタイプでした。ですがジョミーがあまりにも心配するのでそのようなことはとても言えず…。

なんだかこの面倒見の良い純真な店長を騙しているような気もしていささか罪悪感に苛まれるブルーですが、言われるままにカウンターの後ろでジョミーの作ってきたサンドイッチを口に運びます。

「…美味しい!」
「そうですか?口に合ってよかった」

それは何の変哲もない卵サンドだったのですが、何故かブルーが今まで食べたどのような豪華な会食メニューよりも美味しかったのです。

「貴方は元々食が細そうだから、これくらいなら大丈夫かなって」

確かにブルーは普段からあまり量は沢山食べられないのですが、それをずばりと言い当てられ、ブルーは内心少々うろたえました。

「そんな風に見えるかな」
「あ、気を悪くしたらごめんなさい。僕、小さい弟や妹がいるもんで、結構そういうのが気になっちゃうんですよね。好き嫌いの多い子に食べてもらえるメニューとか普段から色々考えたりしちゃって」


テラ最大のチェーン店、シャングリラ・フラワーズで最大の売り上げを記録する最年少の店長のあどけない笑顔に、ブルーは何も言えなくなるのです。とにかく他のどの店舗の店長よりも、ジョミーはあまりにも違っていたのでした。


~続く~
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