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ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
愛の妄想劇場:アリゾナ(1)
今回の妄想はDuranDuranの曲「Leave the Light On」のイメージから生まれました。これは2011のアルバム「All You Need is Now」に収録されてるんですけど、ワタクシはこのアルバムが一番好きです。どの曲も好み…ほう…(#^^#)惜しむべくはどの曲をネタにしようと思ってもまあ大体現代パロにせざるを得ないところですかね(ーー;)あ〜今思い出したけどシャングリラ・ミュージック妄想もDuranDuranの以前のアルバム「Astronaut」を聞いてたら勝手に生まれたんでした。どうもありがとういつもお世話になってます!(笑)普段は割と二人の出会い的な話ばっかり妄想していますが、過去に何かあった二人の再会ってのもたまにはステキですよね〜(^3^)

そんで曲自体が割と具体的な内容なおかげでせっかくリアルにイメージが湧いたから一応場所的な何かも決めておこうと思いまして地図とにらめっこしてたんですが、場所としてはありがちだけどアリゾナかな〜って。そんでもって大学はスタンフォードかカリフォルニア工科大学か迷ったんですがまあハイテク系(ざっくりすぎ)の分野ならやっぱりカリフォルニア工科大学、そうなると大学の場所はサンフランシスコではなくLAになって距離がだいぶ変わってくるのですが〜。ジョミーの実家はサンフランシスコとLAの中間のどこかってことにしておけば一応辻褄も合う(笑)アメリカって本当飛行機から見下ろしてみても「こんなところでどうやって暮らしていけんの??」って不思議になるような何にも無いところでもちゃんと道路はあるしぽつんと民家があったりするんですよね…。



Side: ジョミー


視界一杯に広がる岩山と砂漠を赤銅色に染めながら、夕日がゆっくりと落ちてゆく。夕焼けとは全く良く言ったものだ。真っ赤に焼けた鋼のような色に照らされるどこまでも続く地平線を眺めながら、ジョミーはふとそんな事を思った。

ジョミーはもはや何度目か、既に数え切れなくなった溜息をついた。急がなければ到着する頃には夜になってしまう。目的地はもうじきだ。辺りがだんだんと夕暮れの闇の中に飲み込まれていきそうな中、それでもジョミーは車のハンドルを握りしめたまま葛藤していた。このまままた何時間もかけて引き返すか、それとも。




事の起こりは一週間ほど前に遡る。


「この招待状をブルーに届けていただけませんこと?」


久々にフィシスに呼び出されたかと思えばそんな用事を事もなげに言いつけられたのだ。律儀にはるばる遠いところからやってきたところへのフィシスの予想外の要求に、ジョミーは当然狼狽した。彼女はいつだって突拍子も無いことを言い出すのが常だったが(そして大抵誰も逆らえない)今回ばかりはさすがのジョミーも驚いた。


「なっ…そんなもの、郵送すればいいじゃないか。それにどうしてわざわざ僕が?変じゃないか、結婚するのは僕じゃないし!」

至極もっともなジョミーの反論を、いとも容易くフィシスはねじ伏せる。

「わたくしは『わざわざ』貴方に頼んでいるのですのよ、ジョミー」
「だから、なんで僕に!」
「貴方だからに決まってます。あれほどお世話になっておいて、何ですのその態度は」
「そ、それは」
「大体貴方の就職だって、最終的に口利きをしてくれたのはブルーですのよ。わたくしの貢献ではございません。それに対して感謝の気持ちはないのですか」


そうフィシスにぴしゃりと言われてしまうと返す言葉も無く、ぐっと詰まってしまったジョミーはついに沈黙した。もともとフィシスに勝てた試しのないジョミーだったが、そこを突かれると確かに分が悪い。もっとも、フィシスに楯突こうなどという勇者はキャンパス内広しといえども一人としていなかったが。

どうしても入りたかった憧れの職場だった。ジョミーが手がけている分野での最先端を走っている企業だ。全く不思議な事にやたらと顔の広いフィシスがそこに知り合いがいるというので紹介を頼んだところ、フィシスは何故かブルーに連絡を取った。どうやらフィシスは彼とまだ交流を続けているごく少数のうちの一人だったらしい。そしてどういう風の吹き回しか、既に業界ではそこそこ名前が知られているブルーがジョミーを絶賛する推薦状を書いてくれたおかげで、殆どフリーパスでジョミーの就職は決まっていた。フィシスに指摘されるまでもなく、まさしく恩人であるからには断れよう筈もない。

だが、ジョミーにとって、それとこれとは話が別だった。内心の動揺を悟られぬよう表情は平静を心がけてはいるが、元々ジョミーは嘘をつくのが苦手だった。

フィシスは一体どこまで知っているのだろう。大学の皆は何も知らない筈だ。誰か一人でも知っている者がいたとすれば、噂が広まらない筈がない。大学でブルーを知らない者はいなかったし、そしてなにより、もしあのことをフィシスが知っていたとすればジョミーの身はそれこそただでは済まなかっただろう。しかしジョミーの大学生活はおおむね非常に平和なものだった。そう、何も気にせずに彼女を取っ替え引っ替えできるほどには。確かにブルーは口の固い男だった。彼は誰にでも親切で優しくて有り余るほどの人望はあったが、その実プライベートな仲の友人といえば本当に数えるほどしかいなかった。そう、そんなことにすら気づけなかった当時の自分は心底馬鹿だったのだ。

答えることもできずに固まったままのジョミーを見て、フィシスは何かを察したようにその黄金の睫毛を伏せて物憂げに溜息をついた。

「先程も申し上げましたけれど、わたくしは貴方だから、頼むのです。どうせ全く連絡も取っていないのでしょう。もう何年になりますの?」
「…5年…かな…」
「ならばなおさら潮時ではないですか?とにかく、必ず貴方の手から直接手渡して頂きたいの。でなければブルーは決して来てはくれないでしょうから。」
「…」
「頼みましたわよ」

結局ジョミーは全く反論できないままに、差し出された上質な白い封筒を受け取った。ここまで言われて断るという選択肢などありようもない。繊細なレースのモチーフに飾られ、女性らしい流暢な飾り文字の踊る封筒は、まるで鉛の塊のようにずしりとジョミーの手の中に収まった。





フィシスから教えられた住所は、一目見ただけで恐ろしく辺鄙なところだとジョミーにも分かった。

今住んでいる街からは車で7時間近く。多少無茶をすればギリギリ日帰りも出来なくはない、という程度には遠い。彼の住む街は空港からも遠く、車で行くほうが手っ取り早いのでそうすることにした。一人で運転している間になんとか心の整理をつけておきたいという気持ちもあった。

乗り馴れた中古の愛車でハイウェイを飛ばしていくうちに、窓の外に流れる景色はみるみるうちに変化してゆく。ビルの立ち並ぶ大都会から川を越え空港を通り過ぎ、育ち過ぎた文明の証を幾つも後にして、車はどんどん走り抜けていった。

途中で適当なローカルのラジオもかけてみた。普段ならばあまり耳に入ることもない、少々古めかしい80年代のヒットソングが流れてくる。しばらく適当に流していたが、なんとなく音楽を聞いているような気分ではなかったので程なくしてステレオのスイッチを切った。

2時間ほども行くと人家は疎らになる一方で、だんだんと草木の影が失せていき荒涼な荒れ地が視界一杯に広がっていく。このように辺り一面何も無い土地にも人が移動するための道がきちんと整備されていることが不思議でならない。こんなところでどうやって生きていけるのだろう。水はどこから引いているのか、仕事などあるのだろうか、この地域の主な産業は一体何なのだろう、とジョミーの脳裏にささやかな疑問が泡のようにいくつも浮いては消えた。

川も湖もない、どこまでも乾き切った土地だった。広々とした大地ばかりが広がってはいるが、これでは牧畜も無理だろう。目に映るものはただただ赤い岩と砂ばかり。灌木がところどころ申し訳程度に生えているくらいで、緑らしき緑すら見当たらない。このように痩せて乾燥した土地では何も育たないに違いない。ここは火星だ、と言われれば信じてしまいそうだ。それくらい生命の気配が無い。だがたまに乾いた山間にぽつりぽつりと人家が見えることを考えると、このような土地でも人が暮らしているのは間違いない。

ジョミーの記憶の中にいるブルーには、この草木一本無い不毛な荒れ地は全く似つかわしくないように思えた。彼は人や情報が溢れかえる大都会こそが似合うタイプだと。だが、人は変わるものだ。今のブルーはジョミーの思い出の中のブルーとは全く違う人物になっているのかもしれない。そうとでも思わなければ説明がつかなかった。

しかし、そもそも自分は彼のことをどれほど知っていただろう?ジョミーは最後に会ったブルーの姿を思い浮かべた。次の瞬間、ジョミーは眉を寄せて関節が白くなるほどにハンドルを固く握りしめた。




ジョミーの脳裏に浮かんだブルーは…泣いていた。
傷つけたのは…ジョミーだ。





「In 5 miles take exit 48, and turn left」

静かだった車内に唐突にGPSの機械音声がやけに大きく鳴り響き、ジョミーの心臓がびくりと跳ねた。数時間前に小さな街で休憩して軽食を取って以来ずっとしばらくハイウェイの一本道を走り続けていた。そのためいちいちGPSをチェックしていなかったのだが、思っていたよりも時間が経過していたらしい。ここまで来たらブルーの家まで、もうじきだ。ジョミーの表情が曇る。とにかく目的地に着くまでは安全運転を心掛けなくてはいけない。あまり他の事に気を取られていて運転がおろそかになってしまっては元も子もない。このあたりでは道路に飛び出してくるような歩行者もすれ違う対向車も殆ど見かけなさそうだからあまり心配は無いのかもしれないが、気をつけるに越した事はない。

信号もない交差点で一時停止し、ハイウェイから降りる。幸いそこもきちんと舗装された道路だった。ここでもほぼ一直線に近い道がどこまでも続いている。見渡す限り他の車の影がほとんど見当たらない。周囲にはぽつんと寂れたガソリンスタンドが一軒あるのみで、お世辞にも人で賑わう街とは言えなさそうだ。ジョミーは大きくひとつ呼吸をし、改めてハンドルを切った。考えを整理するどころか、思考は泥沼にはまる一方だ。目的地に到着する前に、少し頭を冷やさなくてはならない。

あたりはだんだん暗くなってゆく。ジョミーは運転席の窓を開け、乾いた空気を吸い込んだ。日没と共に気温が下がってきたせいか、思ったよりも清々しい。車のスピードを上げるにつれ、外から入り込む風が車の中の重苦しかった空気を一掃していった。

ふとジョミーは助手席に目をやった。助手席にポンとむき出しで放り出したままだったフィシスの招待状は、吹き飛ばされる事なく無事にそこにある。それを確認し、ジョミーは少し安堵した。肝心のこれを無くしてしまったら行く意味が無い。そしてその下にある小さな一冊のハードカバーの本がジョミーの目に飛び込んだ。本自体の内容は特に取り立ててなんということはない…初心者向けプログラミングの本だ。しかし頁の中には一枚の写真が挟まれている、筈だ。ブルーとジョミーが二人で写っている写真だ。

あれはジョミーがゼミの一員として初めてセミナーをやった日だった。初めて同じ分野の仲間達の前で研究内容を発表するため、随分緊張した事を覚えている。今となっては講演などどんな相手の前でもお手の物だが、誰にでも初めての経験というものはあるものだ。トーク直後に感想を言いにブルーが来たところを、目の保養ですわねとかなんとか言いながらフィシスがパチリと撮ったものだった。頼んでもいないのにプリントアウトしてフィシスから貰ったその写真ををなくさないようにとりあえず手持ちのこの本に挟んでおいたのだが、ブルーが大学を去ってから、いやあの事があってから、写真を目にするどころか写真を挟んでおいた本自体開ける事が出来ない有様だった。それなのに、本ごと処分することも出来ず、移動する時は未練がましくいつもその本を荷物に入れて持ち歩いてしまう。頁に挟まっているその小さな紙片には、何の屈託も無く笑う二人の姿が写っている筈だ。

そう、あの頃に戻れたなら。
しかし、どんなに悔やんでみてもあの日々は戻って来ない。
壊したのは、自分だ。 



ここに来るまでにいやというほど同じ記憶を反芻していたが、何の答えも出ない。結局こうして何年も経過してからフィシスに現実を突きつけられて初めて、ジョミーは気づかざるを得なかった。目を背けて見えないつもりになっていても、結局ジョミーの中にあるものは消えて無くなることはない。ブルーとの間に起きた事は過去の出来事ではない。何年たっても常に自分の中につきまとい、いつかは向き合わなければならない怪物だった。逃げ続けていてもどうにもならない。きちんとブルーと会って、話をして…それから…?

ブルーにはジョミーが出向く事についてフィシスからあらかじめ連絡が入っている筈だった。一体彼はどんな態度で自分を迎えるだろう。感情的に自分を罵るか、それとも冷たくあしらわれるだけだろうか?フィシスがどのように頼んだのかは知らないが、ブルーが就職先に推薦状を書いてくれたという事実は、ジョミーにとって少なからぬ衝撃だった。一体ブルーの本心はどこにあるのだろう?ひょっとしたら、彼は単にジョミーの口を封じたくてフィシスの申し出を受けただけなのかもしれない。それとも、本当に彼にとってはあの事も取るに足らない些事に過ぎないのかもしれなかった。…本当に?

分からない。本音を言えば、ジョミーはブルーに二度と会いたくはなかった。彼がどんな顔をしてどんな目で自分を見るか、考えただけでも恐ろしい。このまま逃げ帰ってしまいたい。そして、何もかも無かった事にしてしまいたい。就職先など、断ってまた新しいところを見つければ良いだけだ。しかしブルーに会わなければ自分はこの先一歩も前に進む事は出来そうになかった。そろそろ自分の過去にきちんとケリをつけなくてはならない。

無意識のうちにジョミーの足はアクセルに更に体重をかけた。古いエンジンが唸りを上げる。どうにかして自分を鼓舞しなければ、とてもブルーの家まで辿り着けそうになかった。背後からぱっくりと口を開けてあたりを呑み込もうとする夜の闇を振り切るように、血のように深紅に染まる地平線に向かってひたすらジョミーは車を走らせる。



重苦しい赤と薄紫色に彩られる天空に、宵の明星がぽつりと一つだけ鈍く輝き始めていた。

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