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ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
お題?的な明さに駄文
ツイッターの某様がこんなことをおっしゃっておったわけですよ。




私アホみたいにお気楽ハッピーエンド主義なもので、このお方様が多分本当に読みたいと思ってらっしゃるであろう、ほんのちょっぴりほろ苦くて、艶めいていて、それでいて切ない、みたいなお話は全く書けないのですが、まあ枯れ木も山の賑わい的な?というか自分だったらこんなオトナなお題(?)は絶対思いつきませんよ。精神年齢がお子ちゃまだからさ。

駄文を書くのも、ほんと久々なので日本語自体もヘン…(ーー;)まあリハビリと思っていっちょやってみました。↓



通夜の晩に審神者の遺体が消えた。
騒然とする本丸、ぬしのいなくなってしまった空の棺を前にして、困惑した表情でおずおずと言い出したのは愛染国俊であった。

「……あのさ、国行がいない」



意外な名前が出たことに、皆が驚いた。

明石国行。
生前の審神者とは特に親しい様子を見せたことのない刀だ。
自称保護者として来派の短刀と大太刀を大事にしてはいるが、あまり他の刀剣と積極的に関わることがないため、良く悪しくも印象が薄い。
審神者が伏せってしまってからは、ますます本丸内でその姿を見かけることがなくなった。
しかし、彼がその怠惰な物言いとは裏腹に、与えられた職務は至極忠実にこなす刀であるのは周知の事実だった。

その刀が通夜の大事な席を放り出してどこかをほっつき歩いているという。
しかも、審神者の棺がもぬけの空という緊急事態なのに、だ。
礼を失するにも程がある。

「あいつ、よりによってこんな時に…っ!!」

すっかり憔悴しきった長谷部が青筋を立てて怒鳴ろうとする、その肩をそっと押さえる者がいた。

「…ほう、そうかそうか」

長谷部の肩を掴んだまま、なぜか三日月が満足げに頷く。長谷部に二の句を告げさせない何かが、そこにあった。
示し合わせたかのように、古い時代を生きた刀達が一斉に口を開いた。

「では、間に合ったのですね」
「そのようだなあ」
「あやつ、思ったよりやりおるな」
「こんやのよていはへんこうですね」
「なに、宴には違いあるまいて」

呆気にとられる長谷部を尻目に、三条の刀達が口々に意味不明な言葉をいともにこやかにかけ合いながら出て行こうとする。

「ちょ、三日月さん!何か知ってるの?だったらみんなにも分かるように説明してくれないかな」

ようやく気を取り直したらしい燭台切が、意を決して皆の不安を代表するかのように青い狩衣姿の美丈夫に声をかけた。

「なに、何も心配することはない。
 全てがあるべき場所に収まった、ただそれだけのことよ」

三条の刀はいつだって相手を煙に巻くような、もったいぶった物言いしかしないのだ。
さざ波のように歓談しながら、空っぽの棺を後にする平安刀達に、部屋に残された刀剣達はただおろおろと顔を見合わせるばかりだった。




…波が、引いては押し寄せる音がする。
どこか、泣きたくなるほど懐かしい。
ねっとりと顔をなぶってゆく潮風に、ここは海なのだなとぼんやりと審神者は思った。

でも、本丸には海はない。

起き上がろうとしたところ、しっかりと自分を抱きかかえる腕があるのに気づく。

どうも最近の記憶があやふやだ。
頭の痛みも、重苦しい呼吸も、思うように動かない体も。
どこかで消え失せてしまったかのように、心身共に実に軽やかだった。

はて、自分は死を待ちながら縁の深い刀達に見守られて床についていた筈では、と思いながら、審神者はもう一度、今度は前回よりも大きく身じろいだ。
しかし、がっちりと自分を抱きとめる腕の力がますます強くなる。
審神者は観念し、抱えられるままに億劫ながらもゆっくりと瞼を開いた。

「おや、目ぇ覚ましはったんですなぁ」

なんとも呑気な声が降ってくる。
はんなりとした京言葉。
そんな喋り方をする人物を、審神者は一人しか知らない。
審神者はゆっくり瞬きをすると、暖かい光の降り注ぐ方へと顔を向けた。
地平線のあるべき場所に、水平線が横たわっていた。
小さな波が、水際を弄んでいる。
ざざ、ざざざ、と、波打ち際の騒めきが、潮風に乗って聞こえてくる。

「…明石?」
「はいな、おはようさん」

なんともこの状況に似つかわしくない、のんびりとした挨拶だった。

「あのう、ここはどこですか」

明石は答えない。
水平線からの光が、目を覆う硝子に反射して、その瞳を覗き込むことができない。
やっと初めて、こんなに近くにいるというのに。

もどかしく思いながら、審神者は言葉を繋ぐ。
これだけは、確認しておかなければならない。

「他の皆さんはどうなさいましたか」
「ああ…今晩は宴会と違いますか
 そこそこ準備も出来とった筈やし
 自分もようけ、手伝いましたからなあ」

よかった。
明石に限ってまさかとは思うが、本丸の仲間達をその手にかけたりするようなことだけはさせたくなかった。

それにしても、と審神者は思う。

なぜ明石なのだろう。

明石はおそらく、審神者と一番交流の薄い刀だった。
近侍につけた時だって、職務関連の必要最低限以外の言葉を交わした記憶は殆どない。
もし自分が隠されるとしたら、もっと別の、自分に執着を見せていたーそう、長谷部あたりかとばかり思っていた。

しかし聞いたところで答えをはぐらかされるような気がして、審神者はとりあえず口を開いた。

「あの、下ろしていただけますか」

明石はちらりと審神者を見たが、そのまま黙ってそっと審神者の体を砂浜に下ろした。
自分を包んでくれていた体温が消え、ぶるりとわずかに体が震える。

何を言うべきか、何か言うべきなのか。
審神者はとりあえず、心に浮かんだ疑問を素直に口にしてみた。

「明石さんは、海がお嫌いだとばかり思っていました」

「主はんは、海がお好きやろ」

軽く返されたその返事に、審神者は絶句する。
…まさか、本当に?

「主はん、えろうすんまへんなあ」

しばらくそのまま二人で並んで海を眺めていると、明石が口を開いた。

「はい?」
「主はん、本当はもう少しあっち側にいられる筈やったんや」
「はあ…」
「自分、術の類はあまり得意でないんですわ
 だから、少々手間がかかりましてなあ」
「…」
「主はんが病やったのは本当やけど、最終的には自分が呪い殺したのに近いようなもんやったと思います
 あまりうまくやれんかったんで、主はんの寿命も、ちょおっとばかり縮んでしまったったんやないかと」

なんと返してよいのかわからない。

「だから」

明石が、体ごとこちらを振り向いた。

「もし、主はんがあっちに何か思い残すような事があったんなら…自分のせいです
 ほんま、すんまへん」

現世に、思い残す事。
審神者は頭を傾げて、ちょっとの間だけ考えた。
やりたい事は、すべてやりきったように思える。
骨身を惜しまず、刀達のために働いた。
自分の持てる全力を注ぎ、刀達と共に歴史遡行軍と戦った。
自分の病を知り、言うべき人達にはお別れの言葉も告げた。
そこには何の後悔の欠片もない。

「特には、なかったかとーああ、ひとつだけあったんでした」

今、思い出した。

硝子の向こうの、二色に彩られた不思議な瞳。

「明石さんの、目を」

もっと、近いところで見てみたいと

私はいつも、そう思っていたんですー


硝子の下を伝う一筋の涙を見つめながら、審神者は一歩、初めて自ら明石国行に歩み寄った。

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