ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
愛の妄想劇場:オークション後編・辛口版
オークション後編、今回は辛口バージョンです。甘口バージョンの天然ブル~様もそれなりに楽しく妄想してたんですが、やはり甘いだけでは個人的に物足りなく…いや、ほのぼのは勿論好きなんですが、せっかく基本設定がオークションっていうタダレタ設定なのでもう少しタダレタ感じの二人にしてみたいなあと思って辛口版も考えてみました。爛れた内容といってもまあなんですか、要するに「いつもののアレ」ってなだけですのでご心配なく(笑)

ではオークション後編・辛口版↓をお楽しみください~♪



さてブルーの屋敷に引き取られたジョミーですが、早速屋敷の者達には歓迎され、学校でも優秀な成績を収め、何不自由ない暮らしをさせてもらっていました。シン家の執事とも交流のあった屋敷の執事ハーレイには特に歓迎され、期待に応えたくてジョミーは屋敷の周りのこまごまとしたことを進んで手伝うようになりました。

しかし屋敷に住み続けるにおいて、知れば知るほどブルーに関しては謎が深まるばかりです。ジョミーを買って屋敷に連れてきたといっても、何もかもまるっきりジョミーの自由にさせておいて、ジョミーには全く関心が無いようにすら見えるのです。いえ、ジョミーに関心が無いというよりも、ブルーは身の回りで起きること全てに関心がないかのように見えてしまいます。十億などという大金をぽんと出してジョミーを買ったからには、大した浪費家、道楽家なのかと思えば全くの逆で…。ブルーの暮らしぶりには全くといって良いほど、楽しみというものがぽっかりと抜け落ちているかのようにジョミーには思えました。家族もなく、信頼を置いているはずの執事ハーレイとも特に多くの言葉を交わすでもなく、ブルーはいつも仕事に没頭しています。というよりも、仕事以外に一体何をして生きていれば良いのか全く分かっていないようにジョミーには見えました。書斎に篭っているときはそれこそ飲まず食わずですし、食事自体まともにとるということがありません。かと思えばこのごろ深酒が過ぎるとハーレイが零すこともあり、不摂生極まりないことこの上ない状態のようです。あまりにも自分の健康に構わないので、無理をして倒れることも良くあるようです。ブルーのその性格は、生い立ちに大きな理由があるというのが、ハーレイの持論です。

ブルーの両親はある日二人でバカンスに出かけたきり帰らぬ人になってしまったのだとハーレイは言います。それはブルーがまだ5歳くらいの時だったそうです。それまではとても素直でいつも笑顔が零れんばかりに幸せそうだったブルーは、その両親の事故から決定的に変わってしまったのだそうです。それというのも、ブルーの両親の死は事故ではないとまことしやかに囁かれていたそうで…。確かに珍しい話ではありません。そして、莫大な財産と数多くの領地は、全て小さな5歳の子供に引き継がれることになったのですから、ハイエナのような周囲が放っておくわけがありません。小さなブルーは、両親が亡くなってすぐ、後見人という名目で叔母…ブルーの父親の妹の屋敷に引き取られたそうです。しかしながら、ブルーの叔父は貴族社会でも特に評判の悪い男だったそうです。引き取られた先の屋敷でも誰とも殆ど口を聞かない様な子だったそうです。5年ほど前に叔父が原因不明の事故死を遂げ、丁度16歳になったブルーは自ら弁護士を雇い叔母とも決裂し、当主として今の地位に納まることになったのだそうです。子供のブルーが叔父叔母の屋敷でどのような扱いを受けていたのかを実際に知る者はおりませんが、口さがない噂を上回るほどにブルーは若くとも主人としては大変に仕え易い良き主人のようで、ブルーの屋敷でブルーを悪く言う召使は一人もいないくらいです。

ブルーは他人を近くに寄せ付けることを嫌い、体に触れられることを大変嫌がるので、身の回りの世話をする役目の者というものを置こうとしません。特にブルーが一人で夜寝室にいるときは決して誰も入れようとしません。しかし、引き取られた当時まだ子供だったジョミーに対しては、ブルーは珍しくそのような警戒心を見せなかったため、ハーレイのたっての願いでもあり、自然とこまごまとしたブルーの世話をジョミーが引き受けることになりました。子供の心を傷つけてはいけないと一応思ったりもするのか、ジョミーが慣れない手つきで運んできた食事などにはブルーも少しは手をつけてくれて、ハーレイも少し胃痛の種が減りました。

しかし、ジョミーが成長するにつれ、ブルーの言動がますますおかしくなってきました。屋敷の他の召使に対してはごく普通、いや、優しいとすら思える言動を取るブルーが、何故かジョミーにだけは…異様に冷たいのです。最初は気のせいだと自分を納得させてきたジョミーですが、部屋に二人きりで周囲に他の者がいないときは特に、突き放すような言動でブルーはジョミーに辛く当たるようになりました。

「ブルー、ベッドメイクが済みました」
「用が済んだならさっさと出て行け、目障りだ」
「…」

最近ではジョミーが用があって声をかけても、目を合わせてすらくれません。あれほどの大金を出して自分を買っておきながら、自分をそれほどに嫌っているのか…憎んでいるのならば、何故さっさと自分を叩き出さずに、こうやって屋敷において生殺しにするような真似をするのか…。十億は確かに大金ですが、ブルーにとっては痛くも痒くもないはした金なのです。ジョミーはさすがにハーレイにも相談してみましたが、ハーレイは実際にそういう場面を見ていないし、元々変わり者の主人のことだからとあまり真面目に取り合ってもらえません。しかしながら、ジョミーにとっては真剣な問題です。何故ならば…ジョミーは、実はずっとブルーのことが好きだったからです。元々冷たい印象を与えるブルーでしたが、オークション会場の舞台裏で初めてブルーに引き合わされたそのときから、氷で出来た彫刻のような自分の主人に、ジョミーは恋に落ちてしまったのです。他人を決して寄せ付けず、孤独で見の周りを固めてやっと安堵しているように見える自分の主人を、たとえ嫌われてでも支えたいとジョミーは思ってしまうのです。

時々ブルーは体調を崩して熱を出したりすることもあります。医者も嫌いで、よほどのことがなければ往診も受け付けないブルー。しかし調子の悪い日にはベッドから起きることも出来ないこともあり、さすがに誰かが寝室に入らなければなりません。

「何をしに…きた…」
「ブルー、汗を拭いて夜着を取り替えるだけです。済んだらすぐに出て行きますから」
「早く済ませろ…君に触られると虫唾が走る」

顔を背けて口ではそう言いながらも、結局ブルーはジョミーのなすがままにさせてくれます。着替えさせ、ベッドにブルーを横たわらせるとブルーはすぐにまた気を失うように寝付いてしまいます。その冷たい表情が、いつも何かに苦しんでいるようで…。どんなに辛いことを言われても、ジョミーはどうしてもブルーをほうっておけません。割り切ることもできず、辛い恋に胸を焦がすジョミーの顔は、段々と暗いものになっていきます。しかし、そんな表情に気づいた者がおりました。

「最近どうした、元気がないな」
「…キース様」
「『様』はいらんと言ったろう」

ブルーを訪問しに来たキースをとりあえず書斎に通したところ、珍しくキースにそんな言葉をかけられ、不意打ちにジョミーはギクリとします。

「なんだか最近ヤツの言動もおかしいし、お前、ここにいて辛い思いをしているのじゃないか」
「…ブルーにはとてもよくしていただいています、不満などありません」
「嘘をつけ。お前、顔に全部書いてあるぞ」
「…」

鋭いキースの指摘に、下手に答えを返すよりはとジョミーはだんまりを決め込むことにして、ひたすらお茶を入れる手を動かします。

「気難しいヤツのお守りも大変だな。最近は色々と苛ついているようだし、どうせお前にきつく当たったりしているんだろう」

確かに図星なのですが、何故キースにそこまで分かってしまうのか。

「お前は知らないだろうが、お前を買ったことでヤツは随分と恨みを買ったからな」
「え」
「お前の両親を殺しただけでは飽き足らず、お前を生かしたままで地獄を見せてやろうと息巻いていた奴等だ。だが、ブルーが後見人についたことで手出しが出来なくなった。幾らなんでもブルーに表立って楯突くような馬鹿はいないが、ヤツのビジネスに姑息な嫌がらせをする者が増えた。」
「…」
「心配しなくても、ブルーはやり手だから、そういう輩に容赦はしない。だが、余計なトラブルが増えたのは事実だし、一つ一つ敵を潰していくのに奔走して、やたらと忙しくなったのは確かだ」

ジョミーは全く知りませんでした…。確かに、いつも限界まで体を酷使する人だとは思っていましたが、そんな裏事情があったなんて初耳です。

「それなら…ブルーが僕のことを疎ましく思うのも当たり前なわけですね…」
「ヤツの思惑は知らん。お前はここにいることに納得しているようには見えないが、どうなんだ」
「僕は…ここにいるべきではないのでしょうか」
「ヤツに買われたからといって、お前がここに留まらなければならないという法はない。金のことが心配なら、俺が清算してやる。いつか俺のビジネスの片腕となってくれる人材を探しているんだ。お前なら才覚はありそうだし、先行投資ということで無駄金にもならん」
「…僕には、そのような価値はありません。自分の主人にすら、厭われているのに…」
「まあ、お前はまだ若い。こんなところで燻っているよりは、一度自分の将来を真剣に考えてみることだ」
「キース」

ぞっとするような冷たい声。ブルーが部屋に入ってきたのです。一体いつから話を聞いていたのでしょう。そそくさと退場するジョミーですが、気になって廊下からそっと立ち聞きしてみました。

「あれは僕が買った子だ。余計なことを吹き込むのはやめてもらいたいな」
「余計なものか。お前、なんであいつを引き取ったのか知らんが、最近あいつはえらく辛そうな顔ばかりしているぞ。血筋を考えたって、お前の元で飼い殺しにしていい人材じゃないだろう」
「君には関係ないことだ」
「お前の下僕として一生を終えさせるには勿体無い奴だと言っているんだ」
「…そんなことは…言われなくても分かっている…」

それ以上は耐え切れず、ジョミーはくるりと踵を返すと、書斎を離れました。


その日から、ブルーは書斎に夜遅くまで篭ることが増えました。ジョミーも中には入れてもらえませんが、酒の量が増えたことは分かります。何かに悩んででもいるのでしょうか…。そんなある夜、ジョミーは夜遅くにブルーの書斎に呼びつけられました。

バシ!と机に叩き付けられた書類の束。

「これは…なんですか」
「君を全寮制の学校に入れることにした。転入手続きはもう済ませてある。寮は一年中いつでも入れるから、荷物を纏めて明日にでも出て行くがいい。君専用の銀行口座も作った。一生遊んでいても困らないくらいの生活費は振り込んであるから好きに使うといい」

無常にもブルーの感情の無い冷たい声で突きつけられた最後通牒に、ジョミーの顔から血の気が失せました。自分は…全くブルーに必要とされていなかった…僕がいなくなっても、この人は何も感じないんだ…。握り締めた手の爪が掌に食い込みます。

「…どういうことですか…」
「これが君の望みだろう。どこへでも…行くがいい。さっさと消えろ、ここから出て行け!」

珍しく声を荒げたかと思うと、それきりブルーは窓に背を向けて一言もジョミーに声をかけてくれません。ジョミーは震える手で、机に散らばった書類を集めます。

「そんなに…僕のことが、嫌いですか」
「…」
「分かりました…出て行きます。二度と、貴方の前に姿は見せません」

泣くものか、絶対にこの冷たい人の前で涙は見せるものか…唇を固く噛み締めるジョミーの背で、重い木の扉が閉まりました…。




その夜言われたままにとりあえず衣服など身の回りのものは纏めてみたものの、ジョミーは当然眠れません。明日はどうせブルーと顔を合わせないまま出発することになるだろうし、今夜が最後の夜だと思うと、最後に一度だけブルーの寝顔を見ておきたいなどと思い立ちました。あれほど好きだった人…。どれだけ嫌われていたとしても、憎まれていたとしても、ジョミーの心はブルーをそう簡単に振り切ることは出来ないのです。

まるでブルーの心のように、重く閉ざされた扉を前に、ジョミーは一瞬躊躇いました。ひょっとしてもしまだブルーが起きていたら…しかし、扉の下から漏れる明かりはなく、灯りが消えているのであればブルーも眠っているに違いないと、細心の注意を払ってジョミーはそっと重い樫の木の扉を押してみました。扉は音も無く開きます。途端にむっと鼻を突く酒の匂い。

(随分、深酒したんだな…大丈夫かな、ブルー…吐いたりしてなければいいけど…)

僅かに差し込む月の光に照らされて、天蓋に施された彫刻の陰影が更に色濃く影を落とします。あまりにも大きすぎるベッドの真ん中に、ぽつんとブルーの細い体がうずくまっています。まるで小さな子供のように丸くなっているその姿に何故かジョミーは胸を突かれて、もっと近くまで寄ってみました。ただでさえ白い肌が青白い月の明かりに照らされて蝋細工のようにぼんやりと白く浮かび上がっています。そして閉じられた銀色の睫毛からは幾筋もの涙の痕がついておりました。どうやら泣きながら眠ってしまったようです。

(ブルーでも…泣くことがあるなんて…)

ジョミーは大層驚き、一体何がこの冷たく見える麗人に涙を流させたのかと不審に思います。いつも強い意志を湛えている紅玉のような瞳が隠されているせいか、ブルーの顔はとても無防備に見えました。思わず…ジョミーは吸い寄せられるように、ブルーの唇に唇を重ねます。

「…ん…」

目を覚まさないブルーに気を良くして、ジョミーは更に大胆に、自らの唇で眠るブルーの唇をこじ開けるとそっとその中に自らの舌を滑り込ませました。苦い酒の味が残る口腔内…。しかしジョミーはそれすらも味わうように、ブルーの舌に自らの舌を絡め、ブルーの口腔内を犯していきます。長いこと想い続けてきた相手の体の体温をこんなに近く感じられるというこの状況に高鳴る胸。ブルーの唇を貪りながら、ジョミーの手はするりとブルーの夜着の間からその中へと滑り込み、初めてブルーの肌に触れました。しっとりと手に吸い付くようなブルーの肌の感触に、ジョミーはいつか理性を手放しで、夢中になってしまいました。ジョミーの手が、全身をくまなく滑っていき…下衣の中にそっと差し込まれました。

「…あ」

鼻にかかった吐息を切なげに吐きながら、ひくりとブルーの体が跳ねました。驚いたことに、ブルーのモノは布地の下で熱くなって形を変えています。想像以上の感触に、ジョミーはクラリと眩暈がするような気がしました。これ以上は、さすがに目を覚ましてしまうかもしれない…でも、もうこの手を止めることはジョミーには出来ません。息を荒げ、ジョミーは自らの指と掌ででブルーの雄をじっくりとあますことなく味わいながら、ブルーの唇を更に深く貪り続けました。

「な…に…?」

どこか寝ぼけたようなブルーの声です。ようやく意識が少し浮上したものの、まだ自分の身に起きていることが良く掴めていない状態です。どうせ自分は明日にはここを出て行く身、ここで手を止めたところで憎まれるならば一緒だと、ここまで来て止めてなどやるものかとジョミーは腹を括ってブルーの体の上に馬乗りに圧し掛かり、ブルーの手足を全身で押さえつけました。どれほど抵抗されてもやめてやるつもりはありません。ブルーの言動に傷つき続けていたジョミーは可愛さ余って憎さ百倍というやつで、ブルーをズタズタに傷つけてやりたいという衝動に駆られていたのです。

「ブルー、いいだろ、一度くらい…やらせてくれたって…っ!どうせ、もう…こんなに、なっちゃってるんだから…さ…!」
「…!!」

少々乱暴にジョミーの手がブルーの性を擦り上げます。当然ですがブルーは暴れます。しかし、その暴れ方が尋常ではありません。一体どこにこんな力が…と思う程の力を振り絞ってブルーはジョミーの体を押しのけようとします。しかし背丈は並ぶほどとはいえ、普段からスポーツで鍛えているジョミーの力に元々ひ弱なブルーが敵う筈もありません。逃げられないと悟ったのか、今度はブルーはぴたりと抵抗を止めて、全身から力を抜いて人形のようにぐったりと横たわったまま、押し殺したような泣き声を上げました。

「やだ…いやだ、放して…叔父様、いやだぁ…っ!」
「…ブルー…?!」
「も、もう、いやだ…許して、お願い…っ!」

子供に戻ったようなたどたどしい台詞で、ガタガタと震えながら嘆願するブルーに、それまですっかり苛立ちに我を忘れていたジョミーは、いきなり頭から冷水を浴びせかけられたように背筋が凍る思いでした。まさか、この人は…。ジョミーの頭の中でパズルのピースがカチリと音を立ててはまる音が聞こえるような気がしました。他人を寄せ付けず、人に触られるのが大嫌いなブルー、寝ているときは決して寝室に人を寄せ付けず、夜は良く寝付けないと不眠がちでいつも疲れたような顔をしているブルー、いつもジョミーのことを熱い眼差しで見つめていながら、ジョミーが気づくと辛そうに顔を背けるブルー…。気がある素振りを見せながら、いつも自分を冷たく突き放すブルー。ジョミーが今まで不審に思っていたブルーの数々の言動のその理由を、ジョミーは悟ってしまったのです。暴れ続けるブルーを、今度は先程までとは全く違った意図でジョミーは押さえつけ、抱きしめました。

「ブルー!僕です、ジョミーです!」
「…じょ、みー?」

やっとブルーの瞳の焦点が合い、まともにジョミーの顔を映します。こんな状況なのに、ジョミーの大好きな瞳に自分の顔が映っているさまから、ジョミーは目が放せません。一体自分はどれだけこのつれない麗人に心を奪われているのだろう…。いつもの虚勢を張っている高慢な態度とは全く違い、目の前のブルーは怯えた子供のような無防備な表情をジョミーの前に晒していました。二人揃って息を切らせながら、二人はただ呆然とお互いを見詰め合っています。

「なんの…真似だ…」

怒りというよりも、状況が良く掴めずに混乱しているのか、弱弱しい言葉がブルーの唇から漏れました。次に返ってくるジョミーの言葉を、恐れているかのようです。流れ続ける自らの涙には、全く気づいてすらいないその様子に、ジョミーの胸がブルーのためにしくりと痛みました。ジョミーはゆっくりと、もしブルーが嫌がるようなら逃げられるようにゆっくりと、その手を上げて、そっとブルーの頬に添えました。ブルーは抵抗しません。ただその泣き濡れた紅い瞳でジョミーを見返してくるばかりです。引き寄せられるように、ジョミーはブルーの目を見つめたまま、唇を重ねました。何度も何度も、角度を変えて、先程とは全く違った優しい仕草で宥めるようにジョミーはブルーの唇に触れます。ブルーは何も言わず、ただジョミーに好きなようにさせていました。ひとしきり口付けの雨を降らせた後、ジョミーは改めてブルーの目を見つめます。ジョミーがいつも苦しい思いで見ていた、空っぽの瞳…でも、その向こうに、一人ぼっちで寂しくて怯える子供の姿が今のジョミーの目には見えました。

「ブルーどうして、泣いてたの…」
「…」
「僕の、せい…?」
「…君には関係ない」
「ブルー、ごめん…ごめん、なさい…」
「何故君が謝る」
「ごめん…なさい…」

月の光だけが薄暗く部屋を照らす中、ブルーの美貌が闇の中に浮かび上がります。色濃く落とされた陰影が、余計にブルーの顔を幼く見せていて…ただ途方に暮れた子供が二人、見詰め合っておりました。何故だか分からないけど、とても切なくなって、ジョミーの目頭がじんわりと熱くなりました。ぼんやりと歪むジョミーの視界の中で、ブルーの瞳からぽろりと新しい涙の粒が零れ落ちます。まるでダイヤモンドのように綺麗だと、ジョミーはすっかり見とれてしまいました。と、その顔が辛そうにくしゃりと歪むと、ジョミーの視線から逃げるように伏せられます。

「僕など…やめておけ。君ならもっとふさわしい相手がいるだろう」

呟くように紡がれるブルーの自暴自棄な物言いに、ジョミーは自分の考えはやはり間違っていなかったことを悟ります。ブルーがジョミーを避けていたのはジョミーが嫌いだったからではなく、自分自身を嫌っていたからなのです。大嫌いな自分自身から守ろうとして、ジョミーを遠ざけようとしていたのです…。何故ブルーが自らからジョミーを守らなければならないかというと、それは、きっと、多分…。

「ブルー…今晩は、ここで寝ても…いいですか?」

ジョミーが初めてこの屋敷に引き取られた夜、慣れない部屋と、めまぐるしい境遇の変化についていけずに寝付けなかった子供のジョミー。ブルーが夜中に様子を見に来てくれて、一体何をされるのかと身を硬くしたジョミーの横にただ背を向けて横になって、一緒に寝てくれたこと。何故…冷たい人だなんてジョミーは今まで思っていたのでしょう。ブルーは本当は、いつだって、あんなに自分を守ってくれていたのに…。

「…どうせ明日にはいなくなるんだ…好きにしろ」
「ブルー…」

ジョミーと言い争うのも面倒だと思ったのか、投げやりな態度でどうでもよさげにぽつりと囁くブルーの声に、ジョミーの胸が震えます。今はまだ、何を言ってもブルーの心に届かないことをジョミーは良く分かっていました。だからその代わりに、ジョミーはブルーの肩をそっと抱くと、自らの腕の中に包み込むようにして寝台に横たわりました。ブルーはずっと涙をぽろぽろと零し続けていました。ブルーはそれきり抵抗は一つもせず、何も言いませんでしたが、ジョミーを放したくないとでもいうように、小さな子供のようにずっとジョミーの体にしがみついていて…。多分それがブルーが今まで隠してきた本音なのだと思うと、ジョミーはことさら腕の中の細い体がいとおしく思えたのです…。


翌日、朝どころか昼近くの時間に大きなベッドでいつものように目を覚ましたブルーです。泥のように、夢も見ずにぐっすりと寝入ってしまったらしく、頭の中は何故か随分とスッキリしていました。窓から見える空は、綺麗に真っ青に晴れ渡っています。空が青いことにすら、初めて気づいたような気がしました。こんなに平穏な気分は本当に思い出せないくらい久しぶりです。

(もう…出発した、頃かな…せめて最後くらい、見送ってやるべきだったか…)

そんな風に淡々とジョミーのことを考えられるようにすらなりました。夕べのことは、ブルーにとって全く現実味が無く、何もかもが酒に溺れた自分の夢だったのかもしれません。

(ごめんなさい、ブルー…)
(これからは、僕が、貴方を守るから…)

涙を流しながら、自分の頬や額に沢山の口付けを落としてきたジョミー。一体何を謝られているのか、ブルーには皆目見当もつきませんでした。そんな自分はやはり人間として大事なものがぽっかり抜け落ちているのだろうと、既に感慨すらも湧かず淡々とそんなことを考えます。新しい環境に移れば順応能力の高い彼のこと、すぐにブルーのことなど忘れるに違いありません。ジョミーは若いし、ブルーのことは一時の気の迷いとしていつかもっと彼にふさわしい伴侶をいずれ見つけることでしょう。

(ブルー!)

ジョミーがこの屋敷に来て初めてブルーが高熱を出して倒れたとき、まだ小さかったジョミーは大層心配して色々と甲斐甲斐しく子供ながらに自分の面倒を見てくれたことをブルーは思い出していました。夜中に何度もうなされていたブルーを起こしてくれて、汗を拭いてくれたり水を飲ませてくれたり…。普段は決して寝室には人を入れない自分も、ジョミーにだけは何故か嫌悪感を感じなかった…。自分はもう、あの会場で客の視線にも負けず堂々としていた子供のジョミーを一目見たときから恋に落ちていたのだと、今更ながらにブルーは気づかずにはおれませんでした。今までずっと見ないようにして、ジョミーを傷つけてしまった。子供の頃の自分に、あのときのジョミーのような強さがあったなら、せめてジョミーのような友人がいてくれたなら、今の自分はもっと違った人間になれていただろうか…そう、ブルーは思ったのです。そうして自分がそうなりたかったと望んだとおりにまっすぐに育ったジョミーの存在に、自分は随分とそれでも救われたとブルーは冷静に思えるようになったのです。

だからこそ、自分などでなくもっと良い相手を見つけて欲しいと、静かに思うのです。

コンコンと軽いノックの音。いつもならば他人にこんな無防備な姿を見せるなどもってのほか、すぐに起き上がって身支度を整えるところですが、何故かそんな気分にすらなれません。物思いに沈んでいたところに邪魔が入り、ハーレイだろうかと物憂げに入れと返事をしたところ、なんと入ってきたのはジョミーではありませんか。

「おはようございます、ブルー。朝のお茶をお持ちしました」
「ジョミー…?」
「はい?」
「なんで、…いるんだ。もう僕の世話など気にしなくていいから…、早く支度をしたまえ」

ブルーに背を向けたまま、カチャカチャと茶器の準備をしながらジョミーは答えます。

「…気が、変わったんです。転入手続きはキャンセルしました。僕はここに残ります」
「馬鹿を…言うな。せっかくここから出て行けるのに」

嬉しい筈なのに、素直に言えないブルーです。そんなブルーに、ジョミーは全くいつも通りに慣れた様子で滑らかな動作でカップとソーサーを手渡します。

「貴方が嫌だと言っても僕は貴方の傍を離れませんから」

ジョミーはそれ以上何も言いません。だけれども、ブルーの言葉を待っているかのように、その綺麗な翡翠のような目に和らいだ色を浮かべてブルーを見つめながら、ただ傍に佇んでいます。ジョミーに何か…言わなくてはいけないような気もするのですが、ブルーには一体何をどう言えばいいのか分かかりません。

ただ紅茶のカップを両手で持ってその琥珀色の水面を見つめるばかりのブルーに、ジョミーは少し目を細めるとそのまま身をかがめ、ブルーの頬に軽く触れるだけの口付けを落とします。触れるか触れないか、本当にそれだけの接触だったのに、ブルーは初めて物凄く動揺してしまいました。あっという間に耳まで真っ赤です。

「朝食をお持ちしますね」

見る見るうちに紅潮したブルーの頬を見ただけで、ジョミーは何か…納得したようで、とても嬉しそうな微笑みを浮かべて一礼し、部屋を退出していきました。上手くジョミーの前で心を隠せなくなってしまった自分自身に、そして、あまりにも純粋で綺麗だったジョミーの微笑に、一人残されたブルーは更に真っ赤になって、とりあえず心を落ち着けようと渡された紅茶をすすりました。

(どうしたんだ…僕は、一体…)

ジョミーの前だとまるで心が丸裸にされてしまったかのように狼狽してしまいます。そんな自分を、持て余しながら…でもジョミーがいてくれるならきっと何もかもが大丈夫の筈と、そんなことまで考えてしまっている自分に更に顔が熱くなり…。どうにもならずに子供のように顔を枕で隠してしまったブルーに、朝食を持って戻ってきたジョミーはまた笑いながら口付けてくれました…。

めでたしめでたし♪
Comment
≪この記事へのコメント≫
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する
 
Designed by aykm.