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ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
愛の妄想劇場: 「トム・コブルとウーニー」
「トム・コブルとウーニー」というのは、イギリスの作家ファージョンの児童文学「ヒナギク野のマーティン・ピピン」という本の中に出てくる一章です。小学生のときに凄く好きだった本で…。「ヒナギク野のマーティン・ピピン」というのは「リンゴ畑のマーティン・ピピン」という本の続編なのですが、リンゴ畑の方は今文庫でも出てるんですけどヒナギク野のほうは絶版でしてね。インターネットの古本屋さんで最近見つけて買いました。リンゴ畑と、あと「ムギの王様」は今でも出版されてるので日本に行ったときに探そうかなと思ってます。

リンゴ畑の方はマーティン・ピピンが6人の乙女達ひとりひとりに恋のお話をするっていう話なんですが、ヒナギク野のほうは、その6人の乙女達の小さな娘達6人に一人ずつその両親の名前を当て、寝る前のお話をするっていう仕立てになってます。で、「トム・コブルとウーニー」はその一番最初のお話。フェアリーの娘と、自分からフェアリーにさらわれた人間の男の子のお話。当然ジョミブルにアレンジ(特に最後の方^3^)してありますが、原作もとてもステキなお話です♪




アタラクシア村に住むジョミーはちょっと変わり者の男の子でした。好奇心が大変旺盛で、なんでもかんでも知りたがりや。何を見ても人とはちょっと違ったものの見方や感じ方をして、それをとめどなく他の者に話すもので、頑固で保守的な村人達からうっとおしがられていました。ジョミーは小さな子供でありながら、村の鼻つまみ者だったのです。

というわけで、世の中に少し腹を立てていたジョミーは、自分からミュウにさらわれることにしました。ジョミーは当時たったの7歳でしたが、既に自分の目でモノを見、自分の頭でモノを考えることを知っていたのです。

どうすればミュウにさらわれるかもジョミーはちゃんと知っていました。ある夜、ジョミーは月の昇る前に野原に出かけて行って、そこにあった一番大きな緑色の輪の真ん中に、夜のお祈りを言わずに寝転びました。月が出ると、野原にミュウ達が現れてジョミーを捕まえました。

「騒いでもダメだぞ、お前は7年ミュウのとりこになったんだ」

ミュウの一人が言いますが、ジョミーはたったの7歳なのに平気な顔です。

「うん、だって僕は自分からさらわれに来たんだもの」

そしてジョミーはいつも村の人達相手にやっているように、一人でぺらぺら色んな話をします。弱ったミュウ達はひそひそと相談します。

「この子をどうする?」
「放してやろうじゃないか」
「それはできないよ、決まりは決まりだ。7年間とりこにしたんだから。その間にこの子がどれくらいサイオンを覚えるかもしれない、凄い魔法使いになるかもしれないし」

ミュウ達が困っていると、びっこを引いた老魔法使いゼルが進み出てきて自分がその子を引き取り、厄介なことにならないように面倒を見ると宣言しました。ミュウ達はジョミーを魔法使いに引渡し、魔法使いはジョミーを家に連れて帰りました。

「やあゼル、その子は誰だい?」

魔法使いの家に住むミュウは16歳くらいで、なんて綺麗な人なんだろう、と子供心にジョミーはそのミュウに見とれてしまいました。

「人間の子のジョミーじゃ、今晩捕まえて7年間とりこにしたんだ」
「ふうん」

ブルーは何の興味もなさげにテーブルにはたきをかけていましたが、ブルーのはたきがホコリに触ると、ホコリが金貨に変わり、テーブルの上が更に散らかるのでした。老魔法使いゼルは口の中でブツブツ文句を言うとサイオンであたりを綺麗に戻しました。

7年たつと、ジョミーは14歳の立派な少年になっていました。ブルーは、やっぱり16歳の綺麗な人でしたが、7年間の間、ブルーはなんだかんだ言いながらも、まるでお母さんのように甲斐甲斐しくジョミーの身の回りの世話をしてくれました。ジョミーの顔や手を洗ったり、髪の毛をくしけずったり、服を洗ったりしてジョミーがいつもこざっぱりしているように気を使ってくれたのです。しかし、ブルーがジョミーの面倒を見ると、必ず何かヘンテコなことが起きました。顔を洗えばジョミーの顔がメッキされたみたいに金ぴかになったり、髪の毛をとかしてもらえば髪の毛が芝生になって、中からタンポポが生えてきたり。それを見るたびに老魔法使いゼルは溜息をついて杖を振って元に戻します。

「全くお前は力が強いばっかりで、本当に困ったミュウじゃて」
「だってしょうがないじゃないか、誰かがこの子の面倒を見てやらなくちゃならないんだから」

老魔法使いが愚痴を言うと、ブルーはそう反論するのが常でした。ブルーはとても素晴らしいサイオンに恵まれて生まれたのですが、残念なことにコントロールがぎっちょで、サイオンが強い分だけ周囲に大変迷惑がかかるのです。ジョミーは仕方なく、ブルーの後始末をするために自分でも頑張ってサイオンをどんどん覚えました。おかげでジョミーはミュウ界の誰にもひけを取らないほどにサイオンの腕が上達したのです。

7年の決まりの日が過ぎたので、14歳のジョミーは人間界に戻ることになりました。お別れの日、ゼルは餞別に魔法の本を一冊くれました。ブルーは、やっぱり何の興味もなさげにテーブルにはたきをかけて、あたりを散らかしていました。

しかし、ミュウの国では7年たったはずなのに、なんと人間界では70年もたっていたのです。仕方なくジョミーは覚えたサイオンでアタラクシアの人々をを助けてあげて暮らすことになりました。そうこうするうちに(都合によりすっ飛ばし)、ジョミーがミュウの国から戻って更に7年がたち、ジョミーは正真正銘21歳になっておりました。

21歳の誕生日に、ジョミーは川岸を歩いていて、綺麗な人が草の中に膝をついているのを見かけました。村の者ではありません。日光に透ける銀色の髪、その手は忙しく草を抜いていましたが、草が抜けるとその後に必ず金の指輪が一個転がり、草ぼうぼうの原っぱにはアタラクシアの娘達全てを2,3度結婚させてもまだ余るくらいの金の指輪がばら撒かれていました。

ジョミーはその様子をしばらく思案するように見ていてから、声をかけました。

「おはよう、何をしているの?」
「見れば分かるだろ、草取りをしてるのさ」
「うん、でもそれじゃあ随分時間がかかりそうだね、ちょっと待っていて」

ジョミーがサイオンを使うとあっという間に土手の雑草は綺麗になくなってしまいました。綺麗な人は気を悪くしたようでした。

「僕の仕事がなくなっちゃったじゃないか、君、なんてことしてくれるんだ!全く自然に反することだ」
「それはそうだね、だってこれはサイオンだもの」
「僕はサイオンは嫌いだよ。せっかくしたことを台無しにしてしまうからね」
「でも時間は省けるよ」
「そんな余計なことしなくたっていいじゃないか。時間なんて、何かに使わなくちゃいけないんだから」

綺麗な人は憤慨しながら立ち上がってジョミーをまじまじと見ると、びっくりして言いました。

「君…、ジョミーじゃないか!」
「貴方はブルーだね。驚いたな、あれから7年たったのに、貴方はまだ16歳なんですね」
「7年じゃないよ、7分さ。君、ゼルの家からさっさと出て行って10分も経っていないていうのに、なんて大きくなったんだろう!ついさっきまでまだ小さな子供だったのに」
「ブルー、人間界まで何をしにきたの。僕はミュウの国にはもう戻らないよ」
「心配しなくたって別に君を連れ戻しに来たわけじゃないよ。本当のことを言うとね、僕はミュウの仲間達と上手くいかなくて人間にさらわれようと思ってやってきたのさ。僕は人間のことをもっと良く知りたいんだ。頑張って上手く人間にさらわれるつもりだから、君は邪魔をしないでくれたまえよ」

そう言うと、ブルーはジョミーを置いてすたすたと歩いていってしまいました。全く相変わらずな麗人の様子に、ジョミーはこっそり苦笑いをかみ殺しました。

次の日、ジョミーが旅館「シャングリラ」の前を通りかかると、酒場のカウンターをブルーが拭いていました。なんだかとてもイキイキとしています。

「やあジョミー。僕、昨日無事にここのおかみさんにさらわれてここで雇ってもらうことにしたのさ。7年間フェアリーの国には戻れないからね。下働きとして頑張って働くよ」
「そうなんですか」
「せっかく来たんだ、何か飲むかい?」
「じゃ、ジンジャーエールを貰おうかな」

ブルーはカウンターの裏から瓶を一本取ってくると、とても気をつけて蓋を開けました。しかし、瓶の中から流れ星が飛び出し、床中に色の着いた雨を降らしてしまったのです。

「もう一本やってみて」

ブルーはまたもう一本瓶を取ってきて蓋を開けましたが、今度は瓶の中からコルクが次から次へと零れ落ちてきて、床がコルクで埋まってしまいました。

「三度目はきっと上手くいくよ」

ジョミーはそう言い、ブルーもそうなるようにと願いました。三本目のコルクは静かに抜け、泡のたったジンジャーエールがジョミーのジョッキの中に一杯に注がれました。泡が消えるが早いか、ジョッキの中には、ジョミーの過去と未来が全て映し出されました。ジョミーはそこに映し出された未来をじっと見つめました。しかしジョミーはブルーに見えないようにこっそり微笑むと、全く慌てることなく、ちっとも構わずに、美味しくブルーの入れてくれたエールを飲み干し、ついでにサイオンを使ってブルーの散らかした跡を片付けてあげたのでした。

ジョミーはアタラクシアのキース公爵の森で森番をして暮らすことになりました。それからというもの、公爵の領地の森では時々魔法のように不思議なことが起き、アタラクシアの人々はひそひそと噂をしました。

そういう噂を聞くたびに、ブルーの機嫌は悪くなるのでした。

「全く馬鹿馬鹿しい悪戯だ」

ブルーはジョッキを磨きながら言うのです。

「何故あの子は普通の人のようにまともな仕事が出来ないんだろう」

しかしブルーがジョッキを棚の上に並べると、そのジョッキは棚の上でじっとせずに踊り出すのでした。

それでも森番が終わると、ジョミーは毎日のようにシャングリラに立ち寄ってブルーの顔を見に来ました。

ブルーは実はとてもジョミーを見下していました。しかし、それはジョミーが人間の子だからとかそういうのではありません。ブルーが嫌ってミュウの国から逃げ出してきたようなこと、つまりサイオンを、ジョミーが好んで使うからです。ジョミーはジョミーで、毎日の暮らしでドキドキワクワクするようなこと、たとえばサイオンを使ってご飯を出したりするようなことをブルーが嫌って、普通にキッチンで料理しようとしたりする姿勢をつまらないなあと思っていました。そこで、ブルーが7年間「シャングリラ」で働いてる間、ブルーはジョミーにことさら知らん振りしていましたし、ジョミーはジョミーで、こっそりブルーの尻拭いをしながらも表面では知らん顔をしていました。二人は実は結構気が合ったのですが、お互いの考え方に全く我慢がならなかったのです。

ブルーは気立てが良く、大変に頑張って良く働いたのですが、ブルーが手を出したものは全ておかしなサイオンが働いて全て台無しになってしまうので、7年経ったある日、ついに旅館のおかみさんブラウはブルーに暇を言い渡しました。

「ブルー、もうおまえさんの契約は期限切れだ、どこにでも好きなところに行っていいよ」
「そんな!もっとここにおいてください!」

ブルーは必死でブラウに懇願しましたが、ブラウの決心も固かったのです。

「年季が切れたし、お前さんはいい子だけど、ミュウのやりかたはアタラクシアのやり方とは違うからね。おまえさんとジョミーのおかげで、わたしたちゃ、アタラクシア中の噂の種になってるのさ」
「僕とジョミーとだって?!」

ブルーはとても気を悪くして叫びました。

「僕達二人を、対にすることはないじゃないか!ジョミーはいつもサイオンばっかり使ってずるをするし、役に立つことをしたためしなんてない。僕は一生懸命頑張って働いているのに…」
「それは分かってるよ。だけどお前の勤めぶりだって、ジョミーと同じでぎっちょなのさ。あたしの見たところ、お前さんとジョミーは同類なんだ。可哀想だけど、もうこれ以上うちには置いておけないよ。ポケットに入るくらいのものなら、餞別になんでもあげるよ」
「じゃあ僕はシャングリラを貰っていきます」

ブルーが言い終わらないうちに、シャングリラは酒場も寝室も台所もそっくり揃ったまま、貯金箱ほどのサイズに縮んでしまって、ブルーはそれをぽんとポケットに入れてミュウの国に戻っていってしまったのです。

ブルーが帰ってしまった日、ジョミーがいつものように仕事が終わってお茶を飲みに旅館によると、旅館があったはずの場所に何もない原っぱでブラウが大泣きしていました。

「もう一軒旅館を建てるなんてこと、できっこない、ああ、あたしは一体これからどうしたらいいんだろう。キース公爵の館のほんの一部でもあったらまた商売が始められるのに」

ジョミーはサイオンを使い、キースの館の四分の一がすぐに目の前に現れました。館の一部が欠けてしまったキース公爵は噂を聞きつけて怒ってやってきましたが、サイオンで行われたことは人間にはどうすることもできず、仕方がないのでジョミーをクビにしてアタラクシアから追い出すことにしたのです。

追い出されたジョミーがアタラクシアを後にして旅をしていると、街道ですすり泣きの声を聞きました。見ると、ミュウの国に帰っていった筈のブルーが道端に座り込み、綺麗な目を腫らして泣いているではありませんか。

「…ブルー??どうしたの、何かあったの?」
「ジョミー…!」

ブルーの銀の睫に縁取られた目からは更に大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちました。

「僕、ミュウの国から追い出されたんだ。シャングリラをとてもきれいにして、ちゃんと旅館として始めたのに、何もかもおかみさんに教わったとおりにやって、みんなにお酒を飲みにきてもらおうと思ったんだ。そうしたら、僕はミュウとしては出来損ないで、ミュウの国ではもう用はないっていうんだ。だからみんなで僕の願いを一つかなえてくれて追い出されたんだ」
「その願いっていうのは、どこにあるの?」
「僕の舌の先に」
「まあ、ないよりマシだよね」

ジョミーはブルーの頬に流れる涙を拭い、すすり泣くブルーの手を取りました。

「じゃあ、僕と一緒に行かない?二人ならきっと何もかも上手くいくよ」
「なんで君なんかと一緒に行かなくちゃいけないんだ!第一君はまだ子供じゃないか」
「僕、もう子供じゃないよ、ブルー」

ジョミーの目にじっと見つめられて、ブルーは泣きながらぐっと詰まってしまいました。あんなに小さなさらわれっ子だったジョミーは、今では立派な28歳の大人の男の姿で自分を見つめていました。それに、自分の手を握るジョミーの手の暖かいこと…。あれほど甲斐甲斐しく面倒を見てやった愛し子は、ずっと自分の尻拭いで自分の面倒を沢山見てきてくれたではありませんか。髪を洗ってやっている間、ぎゅっと自分にしがみついていたあの小さな手は、今では大きく優しく暖かく自分の手を包んでくれています。

「…僕はサイオンは嫌いだよ」
「そりゃ、使わなくていいなら僕も使いたくないですけど、しょうがないじゃないですか。誰かが貴方のしでかしたことの面倒を見てやらなくちゃならないんですから」

昔ブルーが子供のジョミーに向かって言ったことと似たようなことをジョミーにくすくす笑いながら言い返され、ブルーは真っ赤になってしまいました。ジョミーは改めてブルーの前に跪くと、子供の頃と変わらぬ、エメラルドのように輝く瞳でブルーを真っ向から見つめました。

「初めてミュウの国に来たときからずっと貴方が好きでした。ブルー、僕と結婚してください」
「…世界中の誰よりも大切にしてくれるなら、結婚してあげてもいいよ」

ブルーがそう舌に乗せるやいなや、願いはかないました。というより、願うまでもなく、ジョミーは今までだってずっとブルーを世界中の誰よりも大切に想っていたのですから。ジョミーは跪いたまま少し背伸びをすると、トマトのように真っ赤になったブルーの頬にそっと初めてのキスをしました。

そうして結婚した二人は子供相手の見世物をしながらあちこちの地方を旅して歩くことにしました。ブルーがしょっちゅうしでかしてしまうサイオンでの魔法のような出来事も、どんなサイオンが零れ落ちても文句を言う子供達はいませんでしたし、皆大喜び。全く二人にとってこれ以上ぴったりの暮らしはなかったのです。ミュウのブルーとさらわれっ子のジョミーは、そうして二人でいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
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