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ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
愛の妄想劇場:シャングリラ・ミュージック(前編)
突然ですがデュランデュランは昔から好きでした。でも最近の方がやっぱり好きですねぇ。2005年のロンドンライブのDVDを持ってるんですが、何回観ても飽きないです。アルバムも持ってますけど、一番好きなのは地味ですが「Astronaut」のアルバムですね~え。で、それを昨日の出勤中に聴いてたら、急にこんな妄想が出てきました。書き始めてみたらなんだか長くなりそうなので、前後編に分けることにしました。というか前中後編になりそうな予感がバリバリします…。小説じゃないのに!単なる妄想劇場なのに!(--;)ちなみに音楽業界のこととかはサッパリ分からないので全てでっちあげです。色々とゆる~い設定の妄想なので、なんでも許せるよって方はどうぞ~↓(拍手レスはまた今度…)

ジョミー・マーキス・シンはミュージシャンの卵。歌が上手く、自分で作曲もし、楽器はギターも少々齧りますがメインはベースギター。勿論音楽で身を立てていきたいとは思っていますが、そうそう上手くチャンスが巡ってくるわけではありません。学生時代からのバンド仲間のサム、スウェナ、キムと卒業してからもバンド活動を続けています。あちこち頑張って売り込んではみましたが、ミュージシャンとしての才能よりも、ジョミーの甘いルックスを買われ、ノア・ミュージックとの契約が決まりました。しかしそれはアイドル歌手のバックバンドとして…。サム、スウェナ、キム達はどんなジャンルであってもとにかくプロとしての第一歩だと大変喜ぶのですが、目指している音楽とは全く違うことにジョミー一人は浮かぬ顔。しかしこれをとっかかりにして、少しでも売れることができれば、ゆくゆくは自分の好きな方向性の音楽を目指せるのではないか、と考え直します。

ですがそのジョミーの淡い希望も、ノア・ミュージックとの初めての打ち合わせで粉々に打ち砕かれます…。顔は可愛いけれどもオンチなアイドル歌手、ニナという少女のバックバンドとして、好みでもないペラペラの服を着せられ、踊りながらニナとデュエットを歌わされたりという売り出し方をするようなのです。音楽は勿論他人の書いたお仕着せの曲。その上今風に(?)受けるように髪も伸ばせとかアクセサリーをジャラジャラつけろだとか、色々見てくれにまで注文が入り、ジョミーはますますゲンナリです。しかもそれだけではなく、ノア・ミュージックの社長であるアドスというでっぷり太った男が、いかにもジョミーのことを打ち合わせの間中舐め回すような好色な目で見たり、馴れ馴れしく肩や背中を撫でてくるのです。

「そのうちにニナちゃんとボーカリストのジョミー君と二人きりで振り付けの打ち合わせをしようと思うんだがね。だからその時は是非ジョミー君一人だけで来て貰いたいものだね」

ニタニタとアドス社長はジョミーを品定めするように眺めます。肩や背中を撫でてくる手が尻に回ってくるのもどうやら時間の問題です。こんな胡散臭い男のところへのこのこと一人だけでやってきたら、一体どんな目に合わされるかわかりません。しかしやっと夢を叶えられそうで純粋に喜ぶ他のバンド仲間を目の当たりにしてジョミーは何も言えないのでした…。

いつかは自分の書いた曲を発表したい、単なるアイドルの背景としてでなく、れっきとしたバンドとして自立したい、そんな夢を捨てきれないジョミーは、バンド仲間とは別に一人で曲を書いては、時折場末の小さなカフェ&バーで自分のギターのみで生演奏するということをしていました。そのカフェは小さいながらも趣味が良く、根っからの音楽好きの常連が集まるところでした。

ある夜ジョミーがいつものように演奏をしていると、カフェの隅っこである人物が今までに見たこともない程真剣に自分の曲に耳を傾けていることに気づきました。特に気にも留めていなかったのですが、夜も遅くなり、カフェの客も殆ど帰ってしまってから、ジョミーが楽器などを片付けているところにその人物はやってきました。

「君の曲、素晴らしかったよ。自分で書いたのかい?」

そんなに真面目に褒められたのは初めてだったので、少々照れ臭さを感じながらジョミーがその人物を見上げると…物凄い美貌の麗人が自分を見下ろしているではありませんか。世にも珍しい美しい銀色の髪、ルビーを思わせるような深紅の瞳。きっちりと着込んだ品の良い白い襟のシャツが良く似合い、思わず目を奪われてしまって一瞬ジョミーの時が凍りました。普通にお礼を言って済ませようと思っていたジョミーですが、途端にしどろもどろです。

「あっ、あ、あの…ありがとう、ございます。はい、全部僕が作りました」
「荒削りだけど、凄く斬新だ。だけどギターは少々苦手みたいだね。普段は違う楽器を使っているの?」
「あ、僕は本当はベースプレイヤーなんですよ。でもベースとボーカルだけだとバランスが悪いんで、ここで演奏するときはギターなんです」
「そうか、一番最初の曲なんか、こんな風にアレンジするともっと素敵になるんじゃないかなと思ってね」

そう言いながら麗人はスタンドに立てかけてあったジョミーのギターを手に取るではありませんか。幾らなんでも見ず知らずの赤の他人に、頑張ってバイトしてお金を貯めて買った自分の大事なギターを勝手に触られてはたまりません。慌てて阻止しようとして…次の瞬間、自分のギターから奏でられる、信じられない程美しい音色にジョミーの手がピタリと止まりました。麗人は、たった一度ジョミーの曲を聴いただけで全部覚えてしまったようなのです。そして、つたないジョミーのギターのメロディよりも更に素晴らしいメロディで、魔法のような指使いで弦を爪弾きながら、「ほら、こんな感じに合わせると良くなるんじゃないかな」などと言うのです。言っちゃなんですが、いつものバンド仲間とは格が違います。麗人はジョミーが今まで出会ったこともない素晴らしい弾き手で、ジョミーはうっとりと聞き惚れてしまいました。

一通り麗人が弾き終わると、ジョミーは素直に興奮してつい拍手までしてしまいます。

「凄いですね…っ!ひょっとして、プロの演奏家の方ですか?」
「いや…趣味でちょっと齧っているくらいさ。君は?」
「一応デビューは決まったような感じなんですけど、自分で目指している方向と全然違うんですよね…僕は『テラ』みたいな音楽を目指しているんです。『テラ』の曲は全部インストロメンタルでボーカルが入ってないから、多少ジャンルとしては違うんですけど」
「…君、『テラ』が好きなの?」
「はい!『テラ』、ご存知なんですか?割とマイナーだから知ってる人って少ないんですよね…僕は『テラ』のアルバムは全部持ってます!一番好きな曲は、やっぱりデビューアルバムの…」

ジョミーと麗人はひとしきり『テラ』の話題で盛り上がりました。『テラ』はシャングリラ・ミュージックから出ているグループのアルバムなのですが、アルバムをリリースするのみでツアーやTV出演などは一切していないため、割とナゾに包まれたグループなのです。ボーカルが入っていなくて地味な為か、あまりメジャーなグループでもありません。しかし、ジョミーはその洗練された音楽に惚れ込んでいて、憧れのバンドの一つでした。

「でも…今決まりそうな話は全然そういう方向じゃなくて」

ノア・ミュージックで、アイドルのバックとして契約のが進んでいるという話をすると、麗人の顔は曇ります。麗人は業界に少々知り合いがいるのだそうですが、ノア・ミュージックは本当に良い話を聞かないから辞めておいたほうがいいというのです。契約しているミュージシャンやアイドル達はこき使われた上に使い捨て、それにノア・ミュージックの社長は男女問わず若い子に手を出すことで有名らしく、中には逃げ出そうとして薬漬けにされてしまったアイドルも過去にいたのだとか…。そんな噂のある社長だとはジョミーは露ほども知りませんでしたが、確かにそれくらいのことをやらかしていても不思議ではありません。ジョミーは自分を舐めるように見ていたノアの社長の好色そうな目を思い出してぞっとしましたが、今はそんなワガママを言っていられる場合でないことも確かなのでした。

「でも…今の僕達にとってはこれがたった一つのチャンスなんです。バンド仲間は契約の話に喜んでるし、今僕がここで抜けたら皆に迷惑をかけることになります。ここで僕が我慢さえすればいつかは夢がかなえられるんじゃないかと思うし…」
「…そうか…」

麗人はそれ以上肯定も否定もせず、ジョミーにギターを返しました。

「あっ、あの…差し支えなかったら、お名前教えていただけませんか」
「ブルーだよ。君は?」
「ジョミーです。ジョミー・マーキス・シン」
「君の音楽には見るべきところがある。夢を諦めてはいけないよ」

ブルーと名乗る麗人はそれだけ言い残すと、夜の闇に消えていきました。ずっと緊張しっぱなしだったジョミーはふぅ、と溜息をつきます。初めて音楽の嗜好が合う人物と少しでも時間を過ごすことが出来てジョミーは少々興奮気味でした。しかし夢のような一時が過ぎた後は現実が待っています。

「そういえば明日もノア・ミュージックで打ち合わせがあるんだった…」

色々と頭痛の種は尽きませんが、とにかくジョミーも明日に備えてさっさと片付けて引き上げることにしました。



どれほど仮病を使ってサボりたいと思ったか知れませんが、イヤイヤ足を引きずるようにジョミーはとにかくノア・ミュージックへと足を運びました。勿論バンド仲間の皆も来ています。しかし、そこにいたのはノア・ミュージックのアドス社長ではありませんでした。

「5分遅刻だ、ジョミー・マーキス・シン」

なんと、応接室でバンド仲間と皆を待っていたのは、夕べカフェで出会ったあの麗人、ブルーではありませんか。今日はビシリといかにも高級そうなスーツを身に着けています。ついうっかり見蕩れてしまいそうになりましたが、なんだか様子が変です。カフェで見せたようなあの優しい表情は欠片も見えず、物凄く冷酷な表情をしています。あまりにも奇遇すぎる再会だとういのに夕べとはまるで別人のようなその様子に、ジョミーは思わず挨拶するのをためらいました。そして、何故か他のバンド仲間は非常に憤慨したような、渋い表情をしています。部屋の中の空気はお世辞にも良いとは言えず、仲間達が床を睨みつけていたり麗人の背をキツイ眼差しで見つめているところから察するに、この部屋の張り詰めた緊張感はこの麗人が原因のようです。どうにも状況が掴めず困惑したジョミーは、とりあえず何かを言わなくてはと口を開きました。

「あの…?」
「ジョミー・マーキス・シン。本日付で君はノア・ミュージックからシャングリラ・ミュージックへの移籍が決まった。」
「…はい?」

シャングリラ・ミュージックといえば、押しも押されぬ音楽業界のトップ会社ではありませんか!アイドルや見てくれだけのミュージシャンでなく、本物志向で、才能のある者だけが引き抜かれるという噂です。実際ジョミーの好きなアルバムやミュージシャンは殆どシャングリラ・ミュージックからCDを出しています。顔の可愛いだけのアイドル歌手を沢山出しているノア・ミュージックなどと違い、ツアーやテレビ出演をしない、アルバムリリースのみのミュージシャンも沢山いるところです。ジョミーの一番入れ込んでいるとも言えるアルバムシリーズ「テラ」だってシャングリラ・ミュージックから出ています。ノア・ミュージックなど目ではありません。ジョミーにとっては、これは願っても無い話です。振って湧いたような幸運に思わずジョミーの顔がほころびます。しかし…。

「今日は君はこのままシャングリラ・ミュージック本社へ向かい、最終契約と打ち合わせを行うので、そのつもりで」
「…?あの…他の皆は…?」

出て行こうとしたブルーにジョミーが不思議に思って声をかけると、ブルーはますます冷たい目でジョミーを振り返ります。

「他のメンバーには君が遅れていた間に既に通達したが、移籍契約は君のみだ」
「…僕だけですって?!そんな…っ」
「一通りデモテープを聴いたが、君以外のメンバーには才能がない。我が社は才能のある者しか引き抜かない方針だ。君が才能の無い友人と音楽ごっこをして遊びたいというのは勝手だが、ノア・ミュージックとの間で契約金についても既に話がついている。君に拒否権はないし、シャングリラ・ミュージックは無駄な人材に投資はしない」
「そんな、無駄な人材だなんて…!」
「事実は事実だ。彼等には才能がない。君には投資するだけの才能がある。それだけだ。外にリムジンを待たせてある。10分後に来たまえ」

冷たく言い放つと、ブルーは踵を返してノア・ミュージックの応接室から出て行ってしまいました。後に残されたのは、ショックで呆然とするバンド仲間とジョミー…。

「畜生…っ!」
「サム、僕…」
「…いいんだ、お前のせいじゃねえよ…それにしても、一体何様なんだ、あいつ…俺達のこと、ボロクソにけなしやがって、悔しい…っ!」
「酷い…あんなこと言われるなんて…」
「キム、スウェナ…」

夢にまで見たシャングリラ・ミュージックとの契約が決まりそうなのは喜ばしいことなのですが、今まで一緒に夢を追ってきた仲間達からこんな形で引き離されるなんて…。バンド仲間だって、新しいボーカルのメンバーをこれから探さなくてはならないし、もし運良くジョミーの代わりが見つからなければ最悪ノア・ミュージックとの契約もポシャってしまうかもしれないのです。自分のせいで、皆に大きな迷惑をかけてしまう…。皆の気持ちを思うと、一体どう声をかけていいか分かりません。スウェナは泣いています。ジョミー自身も酷くショックを受けていました。

「…10分だ…」

と、固く拳を握り締めてうつむいていたサムが、少々青ざめた顔でジョミーを見上げます。

「行って来いよ…お前の夢が、かなうんだぜ…」
「サム、でも…」
「シャングリラに契約が決まるなんて、こんなにいい話はないぜ。お前、俺達の分まで頑張れよな」
「サム…」
「ま、お前が売れっ子になったら俺達にメシでも奢ってくれや、な?」

サムが物凄く無理をして笑顔を作っているのが長い付き合いのジョミーにはよく分かりました。サムはいつだってそうなのです…人のことをまず優先して考える。そんなサムだからこそ、音楽の嗜好が違っても二人は今まで仲良くやってきたのです。そんなサムを裏切るなんてこと…。

「拒否権は無いって言われただろ、早く行って来い!」
「サム、また…連絡するから!」

無理矢理作った笑顔で、強い力でサムに背中を押され、混乱したままジョミーはとにかくビルの外に走りました。確かに高級そうなリムジンが停まっており、外に秘書らしき人物が立っています。ジョミーがリムジンに近づくと、何も言わなくてもその秘書がリムジンのドアを開けてくれ、ジョミーは中に乗り込みました。反対側の席には、膝に乗せたノートパソコンのを忙しく弄るブルーが座っていました。リムジンは音も立てずに静かに発進します。

「あの…」
「これはビジネスだ。あまり馴れ馴れしく話しかけられては困る」

顔も上げずにピシャリと叩き付けられるように言葉を遮られ、あまりにもそっけない口ぶりに、さすがにジョミーも腹が立ってきました。そもそも、ジョミーを勝手に移籍するなんて、一体どんな人物なのでしょう。

「一体貴方は、どなたなんですか、こんな事、急に決められても…」
「そういえば君は遅刻して来たんだったね。初回は多目に見るが、これからは時間は厳守してもらわないと困る。僕はこういう者だ」

ぞんざいに差し出された名刺の肩書きを見ると、「シャングリラ・ミュージック・エンターテイメント 代表取締役」と書いてあります。代表取締役…??つまり、シャングリラ・ミュージックの社長ではありませんか!!!この人が…社長…まさか…。このいかにも冷酷そうな人が、シャングリラの社長だなんて…。

「我が社と契約が決まったからには、もっと自分の立場を考えて発言したまえ」
「あの、ブル…ブルー社長。さっきのあの言い方は、幾らなんでも酷すぎるのではありませんか。僕達は仮にも今まで一緒に頑張ってきた仲間達なのに」

それでもどうしても一言言わずにおれないのが若さでもあり、ジョミーの性分です。

「真実を述べたまでだ。我が社が欲しているのは君の才能のみで、他の者には用が無い。才能の無い者に足を引っ張られた末に、あんな会社のクズ社長の抱き人形に落ちぶれたいというのなら僕は止めないがね」
「そんな…!」
「ならばくだらない感傷は捨てることだ。それに、シャングリラに入ったからといって君がラクを出来ると思ったら大間違いだ。投資しただけの金は取り戻させてもらう。君のサポートにはトップクラスのプレイヤーをつけることが決まっている。君の声にはまだ音域が足りないから、ボイストレーナーもつける予定だ。平行して早速レコーディングに入ってもらう。それなりの業績は上げてもらおう」
「…」
「まず君にはプロ意識というものを一から叩き込む必要があるようだな」

全く反論の言葉を差し挟む余地すら無く、立て板に水といった様子でブルー社長は続けます。そこにはあのカフェの夜に垣間見せた優しい表情は一つも見えません。喋り終わると、ブルー社長はそれきりジョミーの方など見ようともせず、まるでジョミーなどその場にいないかのようにノートパソコンに忙しそうに何かを打ち込んでいます。まるで全くの別人のようです…。あのカフェでの出来事は、夢だったのかもしれません。

「…わかりました…」

夢にまで見たトップクラスのレコード会社と契約が決まるなんて、願っても無い、身に余る程の幸運です。本来ならば天にも昇る心地でなければならない筈なのに、心は重く、まるで鉛を詰めた様です。今のジョミーには、俯いて唇を噛み締めてそれだけ答えるのがやっとでした…。
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