ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
愛の妄想劇場・シャングリラ・ミュージック(中編)
今週の土曜日夜11時からチャットしま~す♪お暇な方是非どうぞ♪

さてさてシャングリラ・ミュージックの中編です。どこで切ればいいのか分からなかったので、とりあえず今回はここで切ってみました。これでもぱぱぱ~と軽く流してみたんですけれどもね…。後編が物凄く長くなったりしたら、中1・中2とかに分けるしかないか…(--;)

設定とか超強引でありえない展開ですが、こ、これは別に小説ぢゃないんだからね!ただの妄想劇場なんだからね!ってなことで超無茶苦茶な設定でも許せるよ~という寛大な方のみドウゾ~↓



その後車の中では全くどちらも一言も発せず、気まずい雰囲気のままにリムジンはシャングリラ・ミュージックの本社に到着しました。並み居るビルのどれにも引けを取らないような立派なビルです。リムジンは社長専用らしい地下の駐車場に乗り付けられ、社長専用らしきエレベーターに無言で乗り込み、最上階のミーティングルームに通されます。さすがシャングリラ・ミュージックビルの最上階だけあって、景観は素晴らしく、壁一面の窓ガラスからは辺りが一面に見渡せます。リムジンの運転手はただの運転手かと思っていたのですが、どうやらそうではなくて秘書だったようで、彼もそのままミーティングルームに入ってきました。ミーティングルームの中にはいかつい顔をした大男が座っています。

「君がジョミー君だね。今日から私が君のマネージャーになる。ハーレイだ、よろしく」

大きな手を差し出されて握手しながら気がついたのですが、そのハーレイという男は補聴器をつけていました。音楽会社なのに補聴器…?まあマネージャーなら別に多少耳が悪くてもどうにかなるのでしょうが…。ジョミーはなんだか不思議な気がしました。そんなジョミーの気持ちなどよそに、ブルー社長が単刀直入にその後を続けます。

「早速だが、君にはこれから数ヶ月、トレーニング期間に入ってもらう」
「…トレーニング期間?」
「まずはボイストレーニングだ。君の声質は悪くないが、高音域の幅がまだ多少狭い。それと、メインの楽器はベースとのことだが、念のため基本のテクニックを一通り、それと音階理論を少々学んでもらう。それと平行して、健康管理の為に体力トレーニングを行ってもらう。これらがメインで、その他にも様々なメニューを組み込んである。シャングリラと契約した者には全て受けてもらうものだ」

言いながら渡されたバインダーに目をやると、ジョミーの名前が印刷されています。中を恐る恐る捲ってみると、そこにはギッチリと朝から晩まで隙間無くスケジュールが組み込まれています。思わずジョミーはげぇ、と声を上げてしまいそうになりました。

「君の背景も一通り調べさせてもらった。君は家族はいないようだね。アパートの方は君には今日のところはとりあえず帰宅してもらって、片付けを済ませて身の回りの物など一式準備してもらう。自宅にはしばらく帰れなくなるということだ。その後トレーニング期間の間は移動の無駄を省く為に社員寮に寝泊りしてもらう。その間の生活費などは全てこちら持ちとなる。君のバイト先には既に連絡済みだ」

家族背景のことやらアパート、バイト先のなどプライベートにまでズカズカと踏み込まれてさすがにジョミーも怒りがこみ上げ、何か言いたくなりましたが…このブルー社長にはきっと何を言っても無駄なのでしょう。なんとなく諦めの心境でジョミーは改めて渡された殺人的なスケジュール表を眺めました。しかしいわゆる養成期間というやつなのでしょうが、ノア・ミュージックで話が出たものとは随分違います。確かノアでの養成期間で受けるレッスンはダンスやポーズのつけ方、あとはスタイリストとの打ち合わせなどがあったくらいのような…それに引き換え、シャングリラの方はさすがにプロ一直線という感じです。

「これが契約書だ。こことここにサインを」

読んでも良く分からないような気はしましたが、とりあえず契約書にもざっとジョミーは目を通してみました。不思議なことに、シャングリラの契約というのはトレーニング期間とアルバムのレコーディング期間のみ、ツアーやTV出演などはまた別個の契約のようです。他のプロダクションのように、一定期間移動できないなどというような規制は一切無く、なんとも自由の利く不思議なシステムでした。勿論今の時点でジョミーに異存があるわけなどなく、ジョミーはそのまま契約書にサインをしました。

「これで正式に決まりだな。詳しいことは君のマネージャーのハーレイやリオに聞いてくれ」

リムジンの運転手と思った人物はリオという名前のようです。話が済むと、ブルー社長はまたさっさと部屋を出て行ってしまいました。

(忙しそうな人だなぁ…)
「あの、これから僕はどうしたらいいんでしょうか」
「とりあえず今日のところは家に帰りたまえ。明日からは本社の宿舎にしばらく泊まり込みになるから、色々準備もあるだろう。何か質問があったら私のところに電話をくれるといい」

新しいマネージャーはいかつい手で名刺をくれました。

とにかくその日はアパートの片付けや、身の回りのものをまとめるためにジョミーはアパートに帰されることになりました。帰宅してからジョミーは一応サムの携帯にも電話してみましたが、どうやら電源を切ってあるらしく、繋がりませんでした。とにかくジョミーはしばらく帰れなくても良いように、一晩中かかってアパートの中をざっと片付けました。

翌日から早速ジョミーはシャングリラ本社に泊まりこみでトレーニング期間に入ります。本社で色々な新しい人達と出会い、ジョミーはあることに気づきました。シャングリラに勤める人達は、体が弱かったり、身体機能のどこかに障害を持っていたり、とにかく体力勝負で馬車馬のようにコキ使われる普通の音楽会社であまり雇われなさげな人が多く働いているのです。ブルー社長のリムジンを運転していたのは運転手ではなく実は社長秘書のリオという人でしたが、やけに物静かな青年だと思ったら、リオは口がきけなかったのです。しかしリオは携帯やモバイル機器を駆使し、必要であれば筆談で、全く問題なく業務をこなしています。あのブル~社長のことだから、いっそリオくらい物静かな人間でないと我慢が出来ないのかもしれません。しかしリオはとても心優しい青年で、ジョミーのことも忙しいであろう業務の合間に甲斐甲斐しく面倒を見てくれたので、元々人懐こいジョミーはすぐに懐きました。基本的な手話や、リオの唇の動きだけでも言いたいことが分かるようになろうと、努力を重ねたおかげで、最初は慣れなかった会話もスムーズに行くようになりました。そしてマネージャーのハーレイは補聴器をつけているところから、聴力に支障があるようです。ボイストレーニングの先生であるエラ女史はとても厳しく、ジョミーは散々シゴかれましたが、エラ女史は全体的に体が弱いようでした。そして基礎音階と基本の音楽理論の講師であるヒルマン教授は義手の持ち主です。しかし誰もが普通に皆と接している様子を見ると、この会社ではきっと珍しくもない光景なのでしょう。

「…不思議な会社だなぁ…」

会社の業務の支障になることは一切合財バッサリと切り捨てそうに見えるけれども、あの冷血そうに見えるブルー社長は、実はかなり風変わりな男なのかもしれません。

音楽理論やテクニックだけでなく、基礎体力をつけるためのトレーニングもメニューには含まれています。酒やドラッグに手を出すミュージシャンが多い中、シャングリラはそういう逃避行為に対して大変厳しいようで、キースという男の組んだ軍隊まがいの「生活改善メニュー」とやらにジョミーは散々泣かされることになりました。朝から晩までギッチリと組まれたトレーニングの一日が終わると、ジョミーは与えられた宿舎の部屋でバッタリと気を失うように眠りに落ちました。

しかし、気の遠くなりそうなトレーニング期間の間、ジョミーは確実に自分に実力がついてきていることを実感していました。シャングリラの養成期間は、ミュージシャンが持てる実力を十分に発揮できる後押しをするために、考えに考えられて作られているものであることに気がついたのです。ブルー社長とはトレーニング期間、時々社内ですれ違うことはありましたが、挨拶一つしてくれず、目すら合わせてくれません。ジョミーは少々その事実に意気消沈しながらも、今自分がなすべきことに集中すべきだと思い直し、与えられたチャンスに感謝しながら頑張ることにしました。

気が遠くなるほどの厳しいトレーニング期間がやっと終わり、少人数での企画ミーティングにジョミーは出席させられることになりました。他に出席していたのは、社長秘書のリオ、ジョミーのマネージャーのハーレイ、そして社長のブルーのみです。

「恒例のシャングリラのウィンター・アルバムのシリーズの一環として、ジョミー・マーキス・シンのデビューアルバムをリリースすることに決定した」

それがブルー社長の決定でした。シャングリラのウィンター・アルバムといえば、いつも選りすぐりのミュージシャンがリリースするシリーズです。全く何の実績もないジョミーにそんな名誉あるアルバムをデビューアルバムとして任される…。ジョミーはあまりに大胆な決断に、ショックで声も出ませんでした。

「君にはシャングリラの所有するコテージにしばらく泊まり込みで曲の構想を練ってもらう。いわばカンヅメというやつだな。アルバムに必要なのは全部で10曲だ。一応『ウィンター・アルバム』と銘打ってあるからには冬をテーマにした曲ということを念頭に置いてもらいたい。それ以外は好きなようにアイデアを練るといい。構想の期間は二ヶ月。その後はこちらで雇ったミュージシャンに入ってもらってレコーディングとミキシングに取り掛かることになる」

ハーレイが慣れた様子でさらさらと伝えます。シャングリラではお決まりの流れということなのでしょう。

『社長、手配するのはどのコテージにいたしましょう』

シャングリラはどうもコテージを複数所持している模様で、モバイル機器に詳細を打ち込んでいたリオが社長に確認を促します。

「ジョミーには作曲期間は『テラ』に入ってもらう。レコーディング開始時にはコテージ3か4への移動を手配してくれ」

「『テラ』を使うのですか…?」

ハーレイが思わず、といった様子で社長に問いかけます。リオもなんだか驚いた表情で社長の顔を見ています。何か特別なコテージなのでしょうか…?

「彼にはあそこが合っているだろう。自由に使わせて構わない。決定は以上だ」

話を断ち切るように、社長は立ち上がるとそのまま出て行ってしまい、打ち合わせは終了となりました。

「あの…?」
『コテージ『テラ』は『テラ』のレコーディング専用なんですよ』

イマイチ話が飲み込めないジョミーに、親切にリオが教えてくれました。「テラ」というと、あのジョミーの憧れのグループ「テラ」のことでしょうか。本当に「テラ」が使っているスタジオと同じ場所でレコーディング出来るのなら、それは本当にジョミーにとって夢のような出来事です。

「『テラ』専用って、あの『テラ』?!本当に?」
『社長があそこを今まで他の人に使わせたことは一度もないんですよ。きっと社長は物凄く貴方に期待をかけているんだと思います』
「…そ、そうなのかな…」

嬉しいけれどもなんだか凄いプレッシャーです。期待と不安が入り混じったまぜこぜの気持ちでジョミーはとりあえずその日は一旦久々に自分のアパートに帰宅しました。久しぶりの自分のアパートですが、前回ここを出て行ったときと今回とでは随分事情が変わったものです。慣れ親しんだ内装や家具の筈なのに、なんだかよそよそしい感じがしてジョミーは少々戸惑いながらのんびりとした夜を過ごしました…。

明日からは今度はコテージで缶詰です。そういえばサムに連絡する機会がなかったなと、ジョミーは改めてサムに電話を入れてみました。

「よぉ、ジョミーか?あれからどうしたか気になってたんだぜ、元気にやってるか、シャングリラの居心地はどうだ?」

今度はちゃんと電話は繋がって、サムと簡単な近況報告などをしあいました。道は分かたれてしまったけれども、サムはやっぱりジョミーの親友です。ジョミーの抜けた後のバンドはどうなったかというと、新しいトォニィというアイドルの卵が後釜に据えられたそうです。甘いルックスに長い髪、チャラチャラした感じの後釜アイドルは、歌こそヘタクソですが、まさにノア・ミュージックの目指すイメージにピッタリ。

「別にお前が謝ることなんかないさ。実際俺達がお前の足を引っ張ってたのは確かだし」
「サム、そんな言い方するなよ…」
「シャングリラの社長の言うことはキツかったけど、俺には結構ガツンときたし、目が覚めたような気がする。確かに俺には音楽の才能はない。だから、向いてないことに向かって無理をするよりは、違うことを目指してみようかと思ってるんだ」
「違うことって?」
「俺、いつか自分のプロダクションを作りたいと思ってるんだ」
「へえ…?」

ジョミーのように才能を持つ人間を潰さないで伸ばしていけるような会社を作りたいのだとサムは言うのです。しばらくジョミーとサムはお互いの夢を語り合い、「お互い頑張ろうな」と励ましあいながら電話を切りました。



「うわぁ~凄いですね…」
ジョミー、リオ、そしてブルー社長はシャングリラ・ミュージックの所有する広大な土地へと車から降り立ちました。都心から車で2時間強程の森の中、広大な土地に美しい湖が広がっています。コテージ『テラ』は湖のほとりに建てられた、豪華なコテージでした。良く見ると、反対側の湖の岸辺、こちらの岸辺からだと米粒くらいにしか見えませんが、あちら側にも何軒も建物が建っているようです。

『通常レコーディングを行うのはあちら側なんですよ』
「へぇ…そうなんだ」
『テラの鍵を管理しているのは社長と僕だけです。今回は貴方用に新しくカードキーを作りました』

リオと社長はさすがに慣れた様子で中に入っていきます。中は広々とし、天然の木材を使った地味ながらもどっしりと落ち着いた内装と作りになっています。湖に面した壁面はどこも一面ガラス張りの窓になっており、そのままガラス戸からバルコニーに出て湖を臨める作りになっていました。中にはこじんまりとしたレコーディング用のスタジオ室が幾つもあり、どれも使いやすそうです。

「ここで『テラ』がいつもレコーディングしてるんですね…」

感激に胸を熱くしながら、ジョミーは社長とリオの後について歩き回りながら感心するばかりです。勿論普通に日常生活が営めるように寝室、バスルーム、キッチンも完備しており、冷蔵庫の中身などを見ても本当に今日から住み込めそうです。使っていないときの手入れは管理会社に頼んでおり、セッションが始まると、週に2度ほど食料や日常の必需品が届けられるのだそうです。ジョミーはここにしばらく篭って曲を作ることになるわけなのですが、なにしろ素晴らしい景観に、幾らでもアイデアが湧いてきそうな気がしました。はっきり言って身に余る栄誉です。しかし、ここまでしてもらえるからには頑張らなければと俄然やる気も湧いてきました。

「君のマネージャーもこのコテージには入れない。君がここにいる間はリオが時々様子を見に来る。それと、コテージの管理人が湖の向こう側に常在しているから、必要なものがあったり緊急の場合はいつでも連絡するといい。携帯の電波は入りにくいかもしれないが、ここの電話は好きに使いたまえ。緊急用番号のリストはここだ。地元の街まで出たい場合はガレージの中に車とキーが置いてあるが、免許を持っていなければ電話一本でリムジンサービスも使える」
「…このドアはなんですか?」
『こちらから先は社長のプライベートエリアとなっております。ここの鍵は別になっています』
「社長もここに寝泊りすることがあるんですか?」
『お忙しい方ですから頻繁にはいらっしゃいませんけどね』

気づかないうちに社長はどこかにいなくなっていました。プライベートエリアとやらに消えたのかもしれません。その後ジョミーはリオがコテージ内の様々な説明をするのを聞いて回り、その夜から早速コテージに寝泊りしながら新しいアルバムの構想を練ることとなりました。

朝は小鳥のさえずりと共に目が覚めます。外を見れば、薄霧のかかった湖で、水鳥が水面で水を飲んだり魚を捕まえたり。リスや野うさぎも頻繁に顔を現します。空気は澄み切り、夜ともなれば空一面に宝石箱をひっくり返したように星が瞬きます。湖の岸辺の向こうには他のコテージのものらしく豆粒のような明かりが幾つか見え、特に一人きりで怖いということもありませんでした。リオは時々ジョミーの様子を見にやってきては、不自由はないかあれこれ世話を焼いてくれました。ブルー社長も時折はコテージを尋ねてきていたようですが、ジョミーはその姿を見たことがありません。それなのに何故社長が来ていたのが分かったかというと、外を散歩するときにコテージの外に社長の車が停まっているのを時折見かけたからです。

こうして一人になってみると、改めて気になるのがブルー社長のことです。あのカフェの一夜では、楽しく音楽について語り合ったりして、多少なりとも心が通い合ったような気がしていたのですが、それは単にジョミーの錯覚に過ぎなかったのでしょうか…。普段はあんなに冷たくてジョミーのことなど全く興味も関心もなさげに見えますが、実際のブルー社長はもっと違う顔を持っている筈なのです。なんだかんだ言って、ブルー社長はジョミーの夢をかなえる為に、無名で全く何のキャリアも持たないジョミーに過ぎる程の環境を整えてくれたではありませんか。過酷なトレーニング期間の間も、ジョミーはとてもブルー社長のことが気になって気になって仕方がなかったのです。本当はもっとブルーのことを知りたい。社長と雇われミュージシャンとしてではなく、もっと普通に沢山話をしてみたい。しかし今の自分の立場ではそのようなことを言っていられる場合ではないのも確かで、ジョミーはブルー社長のことが気がかりでありながらも、作曲に没頭することにしました。とにかくブルー社長の期待を裏切らない為にも最高の曲を作ること。それで少しでも恩返しをしたかったのです。

次から次へとインスピレーションが泉のように湧いてくるような最高な環境でジョミーは無我夢中で曲を書き、ついにアルバム用の10曲を書き上げました。どれもジョミー自身得心の曲ばかりです。

一息つきたくなって、久々にジョミーはサムに電話を入れました。ひとしきりお互いに近況を報告しあった後、サムは少々驚くようなニュースを伝えてきました。サムはなんとノア・ミュージックを辞めたというのです。

「俺、本気でやろうと思うよ。自分のプロダクションを作るんだ。スウェナやキムも手伝ってくれるって言ってるんだ」

形こそ違え、サムもまっしぐらに自分の夢に突き進むことを決心したようです。ジョミーは心からサムの新しい門出を応援しました。

曲が仕上がれば、あとはレコーディングです。ジョミーは今度は湖の向こう側の岸のコテージのうちの一つに移動することになり、そこにエンジニアや他のプレイヤー達が次々に到着しました。新しいコテージも、コテージ『テラ』に負けず劣らず快適な居心地です。シャングリラ・ミュージックがジョミーのデビューアルバムの為に呼んだミュージシャンはどれも豪華な顔ぶれです。全く無名の新人のアルバムのために集められたというのに、さすがはプロ、誰も文句一つ言わずに早速作業に取り掛かります。

「ふむむ、荒削りじゃが、面白そうなアイデアじゃな。」

インドの弦楽器、シタール奏者のゼルなど、随分な年ですが思考が柔軟で、ジョミーのアイデアの通りに素晴らしいアレンジを加えてくれました。レコーディング作業、ミキシング作業は突貫工事で進められ、時々ブルー社長もミキシングルームに顔を出しては一言も言わずにただ聞き入っていました。


ジョミーのデビューアルバムは鳴り物入りでリリースされ、興行的に素晴らしい数字を叩き出し、ジョミーの名は一躍音楽業界に知れ渡ることになりました。勿論シャングリラ・ミュージックという大きな後押しもあったことは確かですが、アルバム自体も大成功。シャングリラ本社ではささやかな祝賀パーティーが開かれました。

パーティーもたけなわな頃、ジョミーは一人社長室のドアをノックします。ブルー社長はいつも通りというかなんというか、ジョミーが入ってきてもPCのモニタから顔も上げません。

「パーティーはまだ続いているだろう。主役が一人で出てきてどうする」
「社長、お願いがあります」
「…なんだ」
「シャングリラの契約はアルバムごとに交わされるという話でしたが、それなら今の僕は自由の身ということですよね」
「法的にはそうなるね」
「僕、シャングリラを辞めたいと思います」
「…なに?」
「親友の立ち上げたプロダクションに入ろうと思うんです」


~続く~
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