ASIAの独り言

在米ジョミブル者の独り言。全て自己責任でお読み下さい。
愛の妄想劇場・魔女っ子メグちゃん(大違)
今回の妄想劇場は元々は魔女っ子メグちゃんという大昔のアニメがチャットで話題に出てきたことが発端でございました。主人公のメグちゃんとライバルのノンっていう二人の魔女がいるってことくらいしか朧気に思い出せませんで、「二人はライバル」「次期女王の座を巡って競い合う二人」「最終回は取っ組み合いの大喧嘩」というキーワードで勝手に妄想が暴走してしまったのですが、後でメグちゃんの設定をチェックしてみたら妄想した内容と全然違ってました(--;)メグちゃんとライバルのノンはそれぞれ人間界に送られて人間の家に居候という設定でやんした…。しかし今回の妄想設定はどちらかというとハリポタのようです。というわけで今回は魔女っ子メグちゃんでありながらそうでないヘンテコなパロってことで…(^^;)今回は特にお話というお話ではなくて適当な妄想って感じです。

で、ライバルっていったらやっぱり可愛いじょみよりツンデレシン様かねぇってことで今回もシン様起用でございます(笑)




「うわぁ~大きな校舎だなぁ…」

ジョミー・マーキス・シンは、まるでお城のように見える校舎を見上げてひとしきり感心していました。ここはシャングリラ魔法学校、選りすぐりの魔力を持った魔女(!)だけが入学を許される学校です。シンは身よりのいない子供でしたが、生まれながらに大変な魔力を持って生まれてきたので、その稀有な才能を見出され高額な奨学金を貰って特待生としてシャングリラに入ることが出来ました。

おのぼりさんのように辺りをきょろきょろしながらシンが歩いていると、向こうからやってきた人影にどん、とぶつかりました。

「あ、すいま…」

シンが謝ろうとして相手を見たところ、一応この学校の生徒のようでしたが、まるで作り物の人形のように綺麗な人でした。銀色の髪、紅い目。が、シンが慌てて謝ろうとしたにも関わらず、相手は見向きもせずにさっさと行ってしまいました。

「なんだありゃ…随分無愛想な奴もいるもんだな」

後で知ることになるのですが、シンがぶつかった相手、ブルーはシャングリラでは知らない者はないというほどの有名人でした。ブルーの家系は代々力の強い魔女を生み出しており、魔女の家柄の中ではいわばエリート中のエリート。そればかりでなく、ブルーの家系の魔女はどれも歴史に残るほどに冷たくて残酷な魔女だという噂。ブルーは最上級生でしたが例外ではなく、毎年学年トップの学力と魔力を誇るトップクラスの魔女でした。実力と家系がものを言うのか、ブルーは寮の中でも特別な個室を与えられているとのことです。そして、そろそろ選ばれる筈の魔界の次期女王の最有力候補だとか…。

「ふぅん」

大して興味もなさげにシンはそれらの噂に適当に相槌を打っていました。シンにとっては魔界の女王が誰になろうが全く関心はなく、それよりも自分が無事にシャングリラを卒業して一人前の魔女として生活を立てていけるかのほうが死活問題です。とにかく将来暮らしていけることが最優先。シンは一生懸命シャングリラで自らの魔力を磨くことに専念します。

しかし、シンの心配は全く杞憂に終わります。さすがに孤児でありながら才能を見出されて特待生にしてもらえただけあり、元々のシンの天性の魔力はシャングリラに来てから目覚しく開花していったのです。シンは今世紀他に見ないというほどの稀代の魔力を発揮し、ぐんぐんその力を伸ばしていきます。新入生でありながら、魔力に関しては上級生をとっくにしのぐほど。元々の生まれ育ちのせいか、気さくで友人達にも分け隔てなく接するシンの人気はシャングリラ内でも高まるばかり。

…しかしそんなシンの姿を、一人苦々しい思いで見つめている者がいました。名門中の名門、トップクラスの生徒であるブルーです。ブルーの家系は元々孤高の魔女ばかりが揃っており、そのような魔女となるべく、それはそれは冷たく厳しいスパルタ教育を施されて育ってきたのです。稀に見る天才としてのシンの名前は、魔界には瞬く間に広がり、ブルーの親の耳にも当然入っています。たまに休暇に自分の実家の城に帰れば、シャングリラでのシンの噂を聞きつけた親にプレッシャーをかけられるのです。

「ブルー、お主あのような下賤の者に遅れを取っているのではあるまいな」
「我等の家名に泥を塗るような真似は許さぬ」

言われなくても、分かっている…悔しさにギリリと唇を噛み締めるブルーです。

一方シンはお金を貰って学校に通っている特待生の身ですから、自分をそんな苦い目で見る相手が存在するなどとは気づいてすらいません。とにかく自分の魔法を磨くことで精一杯、シャングリラの伝説の存在であるブルーに頑張って追いつこうというくらいの気持ちで、努力を続けています。

シャングリラでは時折学年入り乱れてのフリースタイルでの実戦魔力比べのようなトーナメントが行われます。今までブルーはそれに参加したことが一度もありませんでした。その理由には、ブルーが飛びぬけて皆よりも実力がありすぎて誰も相手になれないという理由が大きかったのですが、他の魔女達と交流する理由をブルーが全く見出せなかったことも大きな理由でした。しかし、新入生として初めてシンが参加したトーナメントで、シンは圧倒的な成績で優勝します。それを見て、ブルーは初めて自分も魔法比べに参加することを決めるのです。初めて魔法比べに参加するブルーの姿を見て、学園中がそれはそれは驚きます…。

しかし、ブルーが参加するようになってから、魔法比べは大荒れに荒れるようになりました。とにかくシンとブルーの二人が一つ頭飛びぬけて天才すぎるので、最終的にはいつもブルーとシンの二人の競り合いになってしまうのです。巻き込まれたら命が危ないほどの凄まじさなので、他の生徒はただただそんな二人を取り巻いて傍観するより他ありません。

二人の魔法の得手不得手も、それはそれは対照的なものでした。ブルーは元々氷の系統の魔法が得意で、細かい技術的なコントロールに長けていました。逆に、シンの得意な魔法は炎系。そして、どちらかというとコントロールは不得手で、力で押し捲るタイプ。しかし総合的なバランスとしては力は拮抗しているといえました。いえ、学年が上で知識がある分、勿論シンはなかなかブルーに追いつけないのですが、ハンデを考えればシンはとても頑張っていたのです。

当然ながら、その魔法比べの結果も逐一ブルーの実家に報告が行くわけで、ブルーはますますエリートの実家からのプレッシャーを感じることになるのです。

特待生であるシン様は、とにかく学校から奨学金を貰って通っているわけですから、最初はとにかく無我夢中で自分の魔法を磨くことで精一杯。しかしそのうち、魔法学校では殆ど伝説の存在であるブルーに対し追いつこうと頑張り、そのうちぬぐんぐんと魔力が伸びて、下級生ながらブルーと肩を並べるほどにまでなります。

しかし一方ブルーは超冷たくてシンに対してツンケンした態度を取り続けるため、シンも意地になってきます。他の生徒達に対しては優しいのですが、ブルーの前だけでは何故か態度も口調もツンケンして挑戦的になってしまうのです。そうしてどんどんブルーを精神的に追い詰めていくシンですが、それが恋心から来るものだとは最初は勿論気づきません。ただ単に家柄をハナにかけてムカつく先輩に目にもの見せてやりたい、と自分では信じているわけです。なので、自分の魔力を伸ばし、ブルーをいつかコテンパンにやっつけてしまえば自分の気持ちが済むだろうと思ってシンはますます頑張ります。

ブルーはブルーで、自分に恐るべきスピードでどんどん追いついてくるシンに内心物凄く怯えています。しかし自分自身でも決してそれを認めようとしません…。

ところがある日、初めて魔力の競い合いでブルーとシンの勝負が、ブルーの勝利ではなく引き分けで終わってしまうのです!いまだかつて誰にも負けたことのないブルーにとっては生まれて初めての屈辱です。一躍学友達にもてはやされるシン。まだまだブルーに勝てたわけではないとはいえ、下級生の自分がブルーと引き分けただけでも大層な進歩、あのプライドの高そうなブルーにはかなりの精神的ダメージを与えられたに違いありません。

しかし、シンは自分がちっとも嬉しくないことに気づくのです…。何故嬉しくなかったかというと、負けを認めた瞬間のブルーの物凄く傷ついた表情が、いつまでもシンの頭の中から離れないのです。そんなブルーの顔を見たくて自分は自分の魔力を磨きたかったのではなかったのに…。それでは一体自分は何のために…?とシンは考えに考えあぐね、やっと自分の中の本当の気持ちに気づくのです。シンが今までがむしゃらに頑張ってきたのは、ブルーに自分の存在を認めて欲しくて、ブルーに自分を見て欲しくて頑張ってきたのであるとやっと気づくわけです。元々孤児のシンは、ブルーのように家柄が良いわけでもなく、何の後ろ盾もありません。そんなブルーに自分の存在に気づいてもらうためには、ただひたすら己の魔力を磨く以外他に方法はありません。孤高の魔女をこの手に入れたい…。その日から、シンの目標はガラリと変化します。

一方ブルーはまだ自分はシンに完全に負けたわけではないとはいえ、プライドが粉々に叩き崩され、悔しくてたまりません。常に冷静沈着で、氷の魔女と呼ばれているブルーですが、シンにこれ以上負けていられない。初めて死に物狂いで、なりふり構わず必死になって、一人で無茶な特訓を続けます。夜も寝ないで必死に訓練を続けているので、表面では平静を装ってはいますが、実はフラフラ。時には飲まず食わずなのでもともと痩せがちなのが更に痩せ、すっかりやつれてしまうのです。その甲斐あって、次回の魔力比べでは、シンに圧勝するブルーです。しかし、シンの隣を通り過ぎて退場するときに、少々足がふらついています。あっ…と思って、シンがブルーを咄嗟に支えるのですが、その時にブルーの痩せ具合と、ブルーの手に出来た血豆にシンが気づきます。

「ブルー…?なんですか、これは!」
「君には関係ないだろう!ほうっておいてくれ!」

ブルーが他人に怒鳴るところなんて、魔法学校の誰もが初めて見る光景です。氷の魔女、孤高の魔女の仮面が、シンの前だと何故かはがれてしまうのです。しかし、その直後、ブルーのカラダがぐらりとかしぎ、ブルーはその場に倒れてしまいます。

「ブルー!」

既に自分の恋心を十二分に自覚しているシンは、迷わずブルーの身体を担ぎ上げて医務室へ運びます。女王学長キースが様子を見に来るのですが、顔色も悪いブルーの寝顔を見ながら学長が気になる一言を。

「疲れているんだろうな…最近家の方から頻繁に便りが届いていたようだし」
「…?」

家からの便りが何故「疲れる」に繋がるのかサッパリわからないシンです。しかし、とりあえずただの過労ということで、自室で休ませればよいということになり、シンはついでなので運んでいきます。ブルーの私室は、特別個室という名とは想像も出来ないほどに、まるでその普段の振る舞いのように非常にそっけなく簡素な内装でした。内装が簡素というよりは、極端に持ち物が少ないとでもいいましょうか…。しかし、机の上には学長キースが言っていたものらしい、家からの便りとやらが数通載っています。好奇心に駆られて、シンはその手紙の一通を覗いてみました。魔法の手紙なので、文字だけでなく声でも読み上げられるその手紙は、どこの馬の骨とも分からぬ特待生に追いつかれるような者はこの家の恥である、負けるようならば勘当だのなんだの、物凄く冷たい声音で綴られています。

そのとき初めて、シンは「ブルーの背負っているもの」に気づくのです。単純に意地が悪くて冷たい人だと思っていたけれど、本当のブルーはもっと違う人なのかもしれないと。それならそれでと、シンは今度は逆方向に決心を固めます。こうなったら、自分の手にブルーが自ら落ちてくるまで、ブルーを徹底的に追い詰めようと思うのです。もしブルーが本当に勘当されて、家から追い出されるのであれば、それはそれでシンにとっては好都合。もうこうなったらブルーにもっと揺さぶりをかけ、自分しか見えなくなるようにしてしまいたいとまで思ってしまうのです。こんなところで、予想もしていなかった自分の中の独占欲を自覚するシンです…。

と、気を失っていたブルーが目を覚まします。

「気がつきましたか」
「…シン?!何故君がここにいる、ここは僕の部屋だ」
「貴方が倒れたから運んできたんですよ」
「そんなこと…僕は頼んでいない」

ブルーは決してシンと目を合わそうとしません。

「ブルー、どうして貴方はそんなに無理をするんですか。魔法界の女王の座なんて、貴方が興味を持つようなものとはとても思えませんが」
「君が一体僕の何を知っているというんだい」
「そうですね、僕は貴方の何も知りません。だけど、貴方のことは全て知りたいな」
「?何を言っているんだ君は、頭でもおかしいんじゃないのか」
「別におかしくても構いませんよ、なにしろ僕は貴方のことが好きですから」
「…!!」

それまで仮面のようだったブルーの顔に、初めて動揺の色が走りました。それを見逃さず、シンは続けます。

「貴方が僕のことを気に食わないらしいことも知ってますけれどね、でも僕は諦めません。貴方の目に僕しか映らないようにいつかなってみせる」
「…出て行ってくれ、今すぐだ」
「ええ、今は退場させてもらいます。でも、貴方のことは絶対に逃がしません、それを忘れないで」
「…」

バタンとシンの前でブルーの部屋の扉が閉ざされます…。

シンはその宣言の通りに、更に自分の魔力に磨きをかけ、下級生ながらも成績でも魔術の腕でも、決して誰もかなわなかったブルーにどんどん追いついていきます。当たり前ですが、ブルーはかなり焦り始めます。魔力比べでも、最近では五分五分の結果に終わることが多く、どれだけ影で努力を重ねても以前ようにブルーの圧倒的勝利というわけにはいきません。しかし、ブルー自身もいつしか気づいてしまうのです…。ブルーがシンに勝てないのは、魔力のせいばかりではなく、シンに以前言われたことがいつも頭のどこかに引っかかってしまい、集中できなくなってしまったからだということに。しかし、人間らしい感情など斬り捨てろと育てられたブルーですから、そんな自分を当然許すことが出来ません。実はシンに段々と内心惹かれてきてしまっていることが許せないのです。しかも、最近ではシンはわざと勝負を引き分けに持ち込んでいるかのような余裕すら見せるようになり…。シンが自分を見つめる視線を思い出したくなくても思い出してしまい、魔法の特訓にも全く集中できなくなってしまいました。

魔法学校のトップクラスの生徒のみが選りすぐりで選ばれ、魔法界の次期魔女を決める魔法比べの勝負の時期がやってきました。トップクラスの生徒達が選ばれるとはいえ、現実としてシンとブルーは他のどの生徒達と比べても頭一つ抜きん出ていてレベルが違うので、当然その二人の一騎打ちになると予想されています。

その前夜、夜も寝られず悶々としていたブルーは思い余って寮のシンの部屋を訪れるのです。もう時間は随分遅い夜更けです。シンはブルーのように個室ではなく、ルームメイトとの相部屋の筈。出来れば本人が出てくれば…と願いながらブルーがコンコン、とノックをすると、「…はい」と物憂げな声と共に扉が開きます。

「…ブルー…?こんな時間に、何か用ですか…?」

寝ぼけ眼で出てきたのはシンでした。ルームメイトではなかったことにほっとしながらも、ブルーは更にまた別の意味でぎょっとしました。いかにも今まで寝てましたという感じで出てきたシンは、下こそはパジャマのズボンを履いていましたが、上半身には何も身に着けておらず、裸だったのです。

「あ、明日の…ことで、話があってきた」
「明日…?ああ、女王候補の勝負の話ですか」

寝起きのシンはいつもの鋭さこそ見られませんでしたが、別の種類の色気をかもし出しています。それになによりも、痩せがちなブルーにはないしなやかな筋肉で覆われたその上半身に、ブルーの目は知らず知らずのうちに釘付けです。

「明日は…僕は本気を出す。だから、君も手を抜くな。本気を出せ。言いたいのはそれだけだ」
「ああ…そのことですか」

シンは軽くあくびをします。その余裕に、ブルーはまた内心物凄く焦燥感を覚えます…。シンは、この勝負に勝とうが負けようがきっとどうでもいいに違いないのです。こんなにみっともないほどに必死になっているのは、ブルーだけ…。しかし、眠そうなシンの次の台詞は、その様子とは裏腹に大胆なものでした。

「僕は、勿論手なんか抜きませんよ。」
「…それならいい」
「だって、僕は明日貴方に勝って、貴方を僕のものにするつもりですから」
「…!」
「ですから当然本気を出します。貴方には絶対に負けません」
「…きっ…君という奴は…!」

みるみるうちにブルーは真っ赤になって、シンの前からあっという間に走り去ってしまいました。

「…可愛いなぁ…」

ブルーの去っていった方向を見ながら、シンはそれだけつぶやくと、また小さなあくびを一つだけしてベッドに戻っていきました…。



さて翌日行われた女王候補決定戦。ブルーの得意とする氷の魔法と、シンの得意とする炎の魔法の真っ向からの対決です。最初は自分の家柄と名誉にかけて必死に頑張っていたブルーですが、今では全くその理由が変わってきてしまっています。シンにだけは負けるわけにはいかない、何故なら…。今まで誰も見たことのない程の強力な魔法がシンに向かって襲い掛かります!しかし、あれやこれやと術の限りを尽くして攻めてくるブルーに、シンは小手先の技は通用しないと感じ、ただひたすら自分の魔力を前回にして力で押していきます。そのうちに、じりじりとブルーが押され始め…。そんなとき、ブルーは夕べシンに言われたことをつい思い出してしまうのです。

(勿論僕は本気を出しますよ)
(だって、僕は貴方を僕のものにするつもりですから)

「こんなときに考え事なんて、余裕、ですね…!」

はっと気づいたときには、隙を見たシンに懐に飛び込まれてしまいます!全力で炎の魔法を叩き付けて来るシン。本気を出すといったのは冗談でもなんでもありませんでした。咄嗟にブルーは氷の壁でシンの魔法を防ぎましたが、シンの繰り出す炎の勢いの方が強く、じりじりと溶けてきてしまいます。

(…破られる…!)

ついにブルーの張った氷の防御壁にヒビが入り、シンの炎がブルーを食い尽くすかと思われます。ブルーは思わず目を閉じました…が、今にも炎がブルーを取り巻こうという、すんでのところでブルーを取り巻く全ての炎が掻き失せました。

(…?)

ブルーが恐る恐る目を開くと、目の前には、不敵に微笑むシンが…。

「僕の勝ちです、ブルー」

気がつくと、ブルーの身体はがっちりとシンに抱きとめられているではありませんか。

「あ…、あ…」

自分のプライドの全てを賭けた勝負に負けた…ブルーはショックから抜けきれず、ただただ目を見開いたまま目の前のシンを見つめます。そのうちに、ブルーの全身ががくがくと震え始めました。

「ブルー…?」

そのただ事ならぬ様子に、シンの眉が潜められます。

「うっ…う…うわぁぁぁーーーっ!!!」
「っ、ちょっと、ブルーっ…!!」

いきなりブルーは大声で絶叫すると、シンに殴りかかりました!ギャラリーにいる他の生徒達や教師もビックリ仰天です。常に冷静沈着、氷の魔女とまで呼ばれたブルーがこんなに取り乱しているのを見るのは、誰もが初めての経験です。咄嗟のことで、シンも受け止めきれず、二人は地面にゴロゴロと転がり、取っ組み合いの大喧嘩です。しかし、どちらかというと一方的にシンに無茶苦茶に殴りかかっているのはブルーの方で、シンはなるべくブルーを傷つけないように、防御に徹しているようです。しかし、そのうちにシンはあることに気づきました。

(…?何か、濡れ…?)

その時初めてシンは気づいたのです、自分に掴みかかるブルーが泣いていることに…。いつもは仮面のように整った、表情すら殆ど見せないブルーなのですが、そんな綺麗な顔が涙でぐしゃぐしゃです。そんなブルーを他の誰にも見せたくなくて、シンは魔法を使ってブルーの私室に瞬間移動します。

「ま、待てっシン!!お前ら~!!!」

大事な次期女王候補の決定戦だというのに、いきなり消えてしまった二人に驚くギャラリー、そして血管が今にも切れそうな学長キースの怒声だけがその場に残されます…。


「あ、うわぁぁぁ、ああああぁぁぁ」

ブルーの私室に飛んだ後も、ブルーは泣きじゃくりながらポカポカとシンを殴りつけます。しかし、ブルーはもともと痩せぎすの上体力もないので、シンは痛くもかゆくもありません。上手くブルーの拳をよけながら、ブルーを受け止めています。ひとしきり殴り続けるとさすがにブルーも体力の限界が来たようで、その手の勢いが弱くなってきます。そこを見はからったかのようにシンが一言…。

「そんなに僕が憎いですか?僕は貴方のことがこんなに好きなのに」
「…っ!!!」

再度シンに殴りかかろうとしたブルーの拳が、シンの力強い手によって阻まれます。そして、それまでブルーに馬乗りにされて殴られていたシンですが、今度はいきなり体勢を変え、今度はブルーがシンに組み敷かれる形になってしまいました。ブルーは全力で抵抗しますが、取っ組み合いですらシンにかないません。

「はっ、放せっ!!」
「いやです」

シンの力強い腕に押さえ込まれ、組み敷かれ、シンの身体の下で未知の感情に怯えるブルーの姿だけがシンの瞳に映ります…。シンは更にブルーに追い討ちをかけるように、組み敷いたブルーの唇を奪います。

「…っ!!」

急にブルーの顔から顔を上げたシンの唇からは、一筋の血が流れていました。涙でぐちゃぐちゃになりながらも、いまだにブルーのプライドはシンに好きにされることをよしとせず、その矜持のままにブルーががシンの唇を噛み切ったのです。しかし、シンはそんなことくらいでは諦めません。再度ブルーを押さえ込み、その手でブルーの顎を押さえ、更にブルーの唇を貪ります。

「ん、んぅっ…っ」

シンの身体の下で必死に抵抗を続けていたブルーですが、シンの力の前にはビクともせず、そのうちにブルーの抵抗が段々と弱ってくるのです…。押さえ込まれて荒々しく口付けられているうちに、ブルーの心の最後の砦が壊れ、シンの手に握りこまれていたブルーの手首はその動きをぱたりと止めます。最終的にブルーはシンの唇と舌を受け入れてゆくのです。一旦堰を切ったように、ブルーはもう自らの心を抑えきれなくなってしまいます。あれ程抵抗していた筈なのに、ブルーの両腕はいまやシンの首に回され、両脚はシンの身体に絡みつき、ブルーはボロボロ涙を流しながら子供のようにシンにしがみつき、その口付けを受け入れます。

「んっ、んんっ、んーーーっ!!」

シンの逞しい身体と体温を全身に感じながら、ブルーはなんと口付けだけで達してしまいました…。荒く息をつくブルーと、やはり息を切らせながらそんなブルーを見下ろすシンです。

「意地っ張りな貴方も素敵だけど、今みたいに素直な貴方も好きですよ…」
「素直なんかであるわけがないだろう!きっ、君なんかに、こんな…っ」
「じゃあもっと素直にさせてあげます…」
「やっ、はなせ、シン…っ」

今までたった一人で孤高を保ってきた矜持も何もかもをシンに壊され、ブルーは泣き濡れた瞳を閉じて更にシンの口付けを受け止めます。

と、そこに魔法でシンの飛んだ先を突き止めて空間移動してきた邪魔者が。

「貴様ら、神聖な儀式をほったらかして一体何をやってい…ぬぉぉ?!貴様ら一体ナニをやっとるか!、やめろ、今すぐやめろ!!」
「うるさいなあ、ここは生徒のプライベートルームですよ?僕達が何をしようと勝手でしょう、さっさと出て行ってください」
「シン、貴様ぁ!仮にも学長の私に向かって、一体どういう口のききかただ!そもそも…」
「…学長…帰りましょうよ、僕達、どう見てもジャマモノですよ…」

秘書マツカに引きずられて学長は退場(笑)学長が来たことも、またいなくなったことも、殆ど気づかないというかどうでもいい二人。

「もう…いい加減に、諦めたら、どうです、か…っ…」
「君こそ…っ、あ、あぁ…っ…やっ、入れる、なぁ…っ…」
「何が…こんなに、欲しがってるくせに…ほら…全部、入りました、よっ…」
「欲しがって、なんか、ないっ…あ、そこぉっ…」
「こうなったら、貴方が泣いて懇願するまで、許してあげませんから…んっ」
「だ、誰が、君なんかに…ひぅっ…」
「あっ…、そんなに締め付けて、反則、ですよ…っ」
「何が反則、だ…っ、感じて、いるくせに…」

それぞれ意地っ張りな言葉とは裏腹に、今まで競い合ってきた分、喰って喰われてという勢いで求めあう二人です。ブルーの部屋には、主導権を奪い合いながらくんずほぐれつする二人の嬌声が響き渡り…。



結局シンはせっかく勝ち取った次期女王候補の座を辞退しました。

「あれほど頑張っていたというのに、全く執着を見せないんだな」
「僕は貴方を手に入れたかったんで、別に権力に興味があるわけじゃありませんからね」

ベッドに寝転がりながら魔法書に目を通すブルーの手が、胸に抱えた黄金色の髪を梳いています。、今にもゴロゴロと喉を鳴らさんばかりの飼い猫のような目で、やはり魔法書を読みながらうっとりとブルーに答えるシンです。シンは今では寮のブルーの個室に頻繁に入り浸るようになりました。

シンが棄権したことで、ブルーにも打診が来たのですが、ブルーもあっさり放棄。キース学長は抜け毛が増えたとか増えないとか…。ブルーの実家では勘当騒ぎになっているらしいですが、今ではブルーは全く気にも留めていない様子です。いつか二人とも卒業したら、二人で暮らす予定です。今までシンに追い詰められていることで自分自身を無理に追い込んでいたブルーですが、シンとの関係が落ち着いてきた今では、前ほどシンに余裕の勝利を味合わせるばかりでなく、魔法比べもやっぱり五分五分の結果になるようになりました。そればかりでなく、ブルーの方にもシンとの魔法比べを楽しむような余裕が生まれてきました。なんだかんだ言って、やはりブルーはそれなりに実力のある魔女だったのです。今まではただひたすらパワーだけで押し捲れば勝てていたシンですが、ブルーもさすがにシンの魔法をあしらうテクを身に着けました。細かい魔法技術が不得手なシンは、まだまだブルーに教えてもらわねばならないことが沢山あります。良きライバル、良き競争相手として、二人は更に自分達の魔法を磨いていきました。もともと得意分野が異なる二人は、お互いに教えられることが沢山あったのです。

「今日の君は悪くなかったよ、この間教えた技術を上手く応用していたね」
「…型だけはなんとか身につきましたけど、集中力がもたないのがまだ難点です。まだまだ貴方には追いつけないなぁ…」
「初めてなのにあそこまで防御できたのは素晴らしいよ。あとは少しずつ練習していけばいい」
「貴方が練習相手になってくれる?」
「勿論、喜んで。ビシバシしごくから覚悟していたまえ」
「…ちゃんとその後ご褒美を貰いますから、大丈夫ですよ」

そう言って、炎の魔術師は、氷の魔術師を溶かすキスを一つくれました…。

めでたしめでたし☆
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